戦力外から鷹のエースへ 原動力は「野球ができる幸せ」藤井皓哉投手(福岡ソフトバンク)ロングインタビュー

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 岡山県笠岡市出身で、プロ野球・福岡ソフトバンクホークスの藤井皓哉(こうや)投手。昨年リリーフで大車輪の活躍を見せましたが、その裏に隠された「挫折」と「静かな闘志」に迫りました。

■中継ぎとして常勝軍団の「勝利の方程式」の一員に
藤井投手インタビュー1
(福岡ソフトバンクホークス 藤井皓哉投手)
「さすがに復帰した一年目で、そこまで投げさせてもらえると思っていなかったので、55試合も投げさせてもらえるとは思わず、びっくりしています」
藤井投手のまなざし
福岡ソフトバンクホークスの「中継ぎの柱」、藤井皓哉投手です。笠岡市出身の26歳。最速156キロのストレートに加え、キレのあるスライダーやフォークを多彩に操りバッターを翻弄します。昨シーズン途中からセットアッパーに定着すると、55試合に登板して22ホールド・防御率1.12と好成績を残し、常勝軍団の「勝利の方程式」を担いました。
 
ーどのようなルーティン(日課)で試合に臨まれているんですか?
何となく
(福岡ソフトバンクホークス 藤井皓哉投手)
「ルーティンは、ないです。なんとなく。なんとなくはある。でも毎日同じじゃないので」
 
ーいつ呼ばれるか分からない、中継ぎとしての心構えは?
シーズン後半について
(福岡ソフトバンクホークス 藤井皓哉投手)
「そうですね。昨シーズン後半の方から、7回・8回というところを投げさせてもらえるようなってからは、試合が始まって、徐々にギアを上げていけばいいなと。今年に繋がるいい経験ができた」

■2014年ドラフト4位で広島に「200勝投手に」→僅か1勝で戦力外に
 
本人も想像していなかったという、昨シーズンの活躍。落ち着いて話す藤井投手ですが、プロの世界で輝くまでには「紆余曲折」がありました。
2014年
2014年、広島東洋カープからドラフト4位で指名を受けた藤井投手。おかやま山陽高校から38年ぶりとなるプロ選手の誕生とあって、大きな期待が寄せられました。
ドラフト4位
「息の長い選手になりたいなと思います」
 
ーその中で何勝くらいできたらいいなと思いますか?
 
(福岡ソフトバンクホークス 藤井皓哉投手)
「200勝目指して、頑張りたいと思います」
 
ただカープに在籍した6年間で、白星は1つだけ。2020年には戦力外通告を受け、独立リーグ・四国アイランドリーグplus・高知にプレーの場を移しました。

終わってしまったなと語る
(福岡ソフトバンクホークス 藤井皓哉投手)
「あっ終わったな、終わってしまったな、みたいな感じ。ひとつカープで結果を残せなかったんですけど。6年間やらせてもらって、ひとつ終わって『これからどうしようかな』って。一番に感じたことは、戦力外になって『もう一度まだ野球をしたい』『もう一度NPBで野球をしたい』という思いがあったので」
■独立リーグで感じた「野球ができていることが幸せだなって」
 独立リーグ1
 独立リーグ2
四国アイランドリーグplusでの一年間は、遠征など、すべてバス移動。体力的にも精神的にも過酷だったといいいますが、自分自身を見つめ直す時間、そして「野球に打ち込める喜び」を強く感じた時間だったといいます。
 野球ができる幸せを語る
 野球を楽しもう
(福岡ソフトバンクホークス 藤井皓哉投手)
「『今までにやってきたことを全部変えてやる』くらいの気持ちで練習をしていた。『野球ができている』ことが幸せだなって思いましたし、勝った負けたで、喜んだり、悔しがれたりすることも幸せなんだな、ってことに気が付いて、『もう一回、野球を楽しもう』『楽しく野球をやろう』と思ってやってきたのが一番の原動力ですかね」
 
■藤井投手を、地元企業も支えてくれた
クールな胸の内に秘めた、野球に対する強い愛情。その熱い思いを支えていたのは、地元・岡山の企業です。
 支えてくれた地元企業
(福岡ソフトバンクホークス 藤井皓哉投手)
「一番最初に作って頂いて、履いていたやつですね」
 スパイク
藤井投手が手にしているのは、昨シーズン試合で着用していたスパイクです。倉敷市の岡本製甲が、「藤井投手の力になりたい」とスパイクを提供。職人がひとつひとつ手がける、全国的にも珍しい「つま先が2つに割れた足袋型シューズ」を使うことで、フォームの安定感がアップし、地面の力をボールに伝えやすくなったといいます。
 技術的なサポートも
(福岡ソフトバンクホークス 藤井皓哉投手)
「素足で立つみたいな感じですね。従来のスパイクだとグラグラしていたんですけど、この靴を履くようになってから立てるので、『地面を掴めている』感じもあるので、すごく立ち感はいいですね」
 
「技術的な部分でもサポートをしてもらったと思っていますし、すごくこのスパイクに助けられた」
 
■「戦力外」から、2023年は「エース」「日本一」へと駆け上がる!
 語る藤井投手
地元・岡山からの支えもあり、昨シーズンをけが無く乗り切れたと振り返る藤井投手。今シーズンは「先発としてチームをけん引したい」と語る、苦労人の2023年の目標は。
 今シーズンの目標は
 「170イニング」と「日本一」
 チームに必要な選手に
(福岡ソフトバンクホークス 藤井皓哉投手)
「『170イニング』と『日本一』。先発投手としてまず170イニング以上投げられれば、チームとして必要とされていると思う。あと『日本一』というのは、昨年達成できなかった『日本一』を達成したいという思いで色紙に書きました。」
 色紙
 「戦力外」という大きな挫折、さらには独立リーグでの経験も糧に、静かに闘志を燃やす藤井投手。昨年優勝を逃した悔しさを胸に、パ・リーグの頂点、そして3年ぶりの日本一目指します。
 ファンについて
(福岡ソフトバンクホークス 藤井皓哉投手)
「(放送エリアの)岡山・香川は広島・阪神のファンが多いと思うんですが。ちょっと福岡PayPayドームまで、ちょっと時間はマツダスタジアムや甲子園よりは掛かるんですけど、見に来てもらえたらと思います」
 エースに
「先発をやるからには、ファンの方から『エース』と呼ばれるような投手を目指していきたいです」
 
(インタビュアー・元高校球児 坂井亮太キャスター
ホークスのエース・千賀滉大投手がメジャーリーグ・メッツへ。福岡ソフトバンクホークスは先発が1枠空いた状態なので、藤井投手にとってもチャンスです。また藤井投手は3月に開かれるWBC・侍ジャパンの最終メンバー候補にも選ばれています。