8月1日(水) よる7:00~7:55

お笑い芸人番頭がやってきた~湯原温泉物語~

露天風呂「砂湯」で名高い岡山県真庭市の湯原温泉。弥生時代には周辺のたたら製鉄の従事者たちが湯治場として利用していたといわれ、江戸時代に現在の温泉郷の街並みの基礎が作られた。戦前・戦後を通じて多くの宿泊客が訪れ、中国・関西地方の奥座敷として愛されてきた。
今春、その湯原で吉本芸人が住み込みを開始した。彼の名は江西あきよし。吉本が47都道府県に配置する「住みます芸人」の岡山担当芸人だ。
江西は、湯原で定期的にお笑いトークショーを開催し、頼まれれば町歩きの観光ガイドも引き受ける。テレビやラジオ番組の収録にも湯原から通い、出演した番組では湯原のネタを披露する。住民票も真庭市に移し、身も心も湯原に捧げる、冗談のような、しかし真剣勝負のプロジェクトだ。
交通網の発達で全国の温泉地から宿泊客が減り続けている。そこへ長引く景気の低迷、少子高齢化が招く後継者不足、観光客の絶対数の減少。
そんな中、新たな付加価値を生み出し、情報発信する温泉地が現れ始めた。
兵庫県神戸市の有馬温泉は旅館組合が旅行代理店の資格を取得し、有馬を起点にした近圏の商店街のスイーツの名店めぐりをPR。自前のツアーも組んで、新たな客層を有馬に呼び込む努力をしている。また、空き家を芸術家の路地裏アートに活用し、観光客の滞留時間を増やす取り組みもしている。滞留時間が増えれば土産屋の売り上げが伸びる。同時に空き家を放置しないことで景観の保全にもつながる。彼らの予測では15年後の有馬の宿泊客は半減しているという。大都市圏に近い温泉地でも安閑としてはいられない。
湯原の取り組みも負けてはいない。医療機関と提携した「湯けむりドック」。人間ドックと温泉旅館の宿泊をセットにした企画だ。これが口コミで話題となり、「湯原=現代の湯治場」というイメージづくりに成功した。
そんなチャレンジ精神旺盛な湯原が取り組む吉本興業とのコラボレーション。期間は半年間。果たして、どのような効果がもたらされるのか。


写真= 昭和30年代の湯原温泉「砂湯」