3月12日(水) よる8:00~8:54

二十九歳 天才女性が舞う

「日本橋の芸者!ほろ酔いだよ!次はお頭!・・・」東京都杉並区の静かな稽古場に威勢のいい掛け声が響く。日本舞踊の人間国宝・花柳寿南海さん(90)の指導風景だ。創作舞踊の大家で舞踊界の至宝といわれる寿南海さん、その技を今まさに受け継ごうとする一人の若手舞踊家がいる。
花柳大日翠(おおひすい)さん29歳。岡山市出身。県立朝日高校・東京芸大を経て舞踊の道へ。
「初めて見たときから注目している。彼女には特殊な才能があるようだ」と花柳流家元・花柳壽輔さん(82)は期待を寄せる。
抑揚のきいた体の動きに、表情による豊かな表現力、古典の手腕はもちろん
現代にヒントを得て踊りを作り上げる創作力…。
彼女の創作舞踊で人気の一つが「洗濯機」。「現代人の暮らしから作ってみた。私が振りつければどうしても日舞になっちゃいます!」と大日翠さんは笑う。
門弟数2万人を誇る日舞最大流派の花柳流ですら30年前に比べればその数は10分の1。時代とともに衰減しゆく日本舞踊界において、彼女は救世主となるのか。
30歳を目前にした2月、芸大時代の仲間と新しい舞台に挑む。ロックに日本舞踊とお囃子を組み合わせる演目も用意される。どのような舞台が完成するのか。
まだ世に知られていない新しい才能・花柳大日翠に密着、その魅力を追った。


写真:花柳大日翠さんと師匠・花柳寿南海さん