9月25日(水) よる7:00~7:55

幻の和牛を求めて~ある牛飼い老人の夏~

 かつて「幻」といわれた和牛の再生に挑む老人がいる。平田五美(いつみ)さん70歳。過疎高齢化により限界集落へと突き進む新見市神郷釜村で、35年にわたりその純血種の復興に尽力してきた。和牛が作業牛として農家に欠かせない存在だった時代、それは他のどれよりも高値で取引されていたという。その名も「竹の谷の牛」。
作業牛の需要がなくなり一度は途絶えていたものを、平田さんは復活させてきた。
ようやく純血に近づき、竹の谷和牛・元祖として商標も登録した。その魅力は昔ながらの「濃厚な赤身の味」だ。和牛が霜降りにまい進する現代において、平田さんは畜産業界の異端、たったひとりで竹の谷和牛を追求してきた。しかし今、その「竹の谷和牛」が注目されようとしている。これまでにない遺伝子を持っている可能性があるというのだ。日本の黒毛和牛全体が近親化し始め障害のリスクが迫っている。その現状を打破する可能性を「竹の谷和牛」の遺伝子は秘めているかもしれないというのだ。平田さんの竹の谷和牛が産気づいた。眠れない日々を過ごす平田さん。
「継承していかねば、これは和牛の宝だから」と宮崎県の肥育農家「森木清美さん」は平田さんを応援している。もはや一人ではない。35年の努力が結実しようとしている。2013年、そんな平田さんと仲間たちの夏を追った。