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「無駄なことはできるだけやった方が良い」イチローさんが進学校・国学院久我山に伝えたかったことと高校生に向き合う理由

イチローさんが高校生と向き合うなかで感じている「面白さ」とは・・・。
イチローさん「だって、(高校生は)あんなに喜んでくれるんですよ。で、キラキラしてさぁ。それが、やがてギラギラするようになったときに、どうなるかはまた楽しみなんだけどね」 昨年11月と12月に一昨年の智弁和歌山に続き2年連続で、高校生への指導を行ったイチローさん(48、マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)。国学院久我山、千葉明徳、高松商業、そして女子高校野球選抜チームとの真剣勝負のエキシビションマッチ。それぞれのチームに向き合ったイチローさんが、伝えたかったことは。 ■強豪校であり進学校・国学院久我山昨年11月29日、この年最初の訪問。イチローさんは、東京のど真ん中にある高校を訪れました。杉並区にある国学院久我山高校。春3度、夏3度の甲子園出場を果たしている、強豪校です。昨年の秋季高校野球東京大会・決勝の二松学舎大付戦。1−3と2点を追う9回2死満塁から4番・成田陸選手(2年)が、走者一掃の逆転サヨナラタイムリーを放ち、37年ぶり3度目の優勝。2011年以来のセンバツ出場をほぼ確実としています。 レジェンドの登場をソワソワしながら待っていた部員たちを前に・・・。 イチローさん:何ができるかできないか分からない。だけど、一緒に練習しましょう、そんなスタンスです。宜しくお願いします。 まずはチームの練習の雰囲気を味わうために、イチローさんは高校生と一緒に守備練習。軽やかなダッシュで外野に向かい、高校生に声を掛けます。 イチローさん:声は張っていきたいね。 部員たち:(力強く)さー、いこう! イチローさん:そうそう! 小さい声の生徒には優しく・・・ イチローさん:小っちゃいよ、声が。 イチローさんも、声を張り「シャー」と気合十分。現役さながら、何度も外野から内野へホームへとボールを投げ込みます。 そして練習開始から15分。尾崎直輝監督(31)のノックを受けて、短い時間の中での14回目の全力投球に、さすがのイチローさんも辛そう。人工芝のグラウンドに膝をつき、その後仰向けになってしまいました。再び立ち上がると・・・ イチローさん:めっちゃ投げるな、久我山。メッチャきついって。(外野の生徒の肩に手を回しながら笑顔で)監督、ちょっと・・・監督鬼やな、鬼。 ところが、ノックが終わり、戻ってくると監督は・・・ 尾崎監督:甘めです。 イチローさん:(首を少し傾けながら)ふー、そうですか。 尾崎監督:一応、久我山は(守備位置から戻るとき)ダッシュで戻らないと(ノックが)もう1本になっちゃうんですけど・・・。 イチローさん:勉強しておきます!(監督・生徒、笑) ■国学院久我山へのアプローチは“野球を考える” イチローさんも音を上げるほど、短い時間で行う厳しい練習には理由がありました。毎年、東大・早慶に多数の合格者を輩出し、文武両道を高いレベルで実践する国学院久我山の学力は東京都トップクラス。そのため、練習は平日、約3時間。曜日によっては、グラウンドを2016年に全国高校選手権で準優勝したサッカー部と共有しています。 Q.国学院久我山の印象はイチローさん「都会の進学校って雰囲気でしたね。練習試合を見たときもものすごく、冷静な、静かな印象でした。人工芝だし、ゲームはそこ(国学院久我山のグラウンド)ではできないですよね。これでどうやって東京都を勝ち抜くんだろうって思いました」 イチローさんが高校生に向き合い、伝えたいこと。国学院久我山へのアプローチは“野球を考える”。限られた環境の中で練習に励んできた国学院久我山、文武両道を目指す学校だからこその、考え抜いた質問を、主将・上田太陽選手(2年)がイチローさんにぶつけました。 上田選手:結果がでないときに、そういうときは自分は悩んでいろいろ考えてしまう・・・。 イチローさん:久我山の選手は頭イイから考えるでしょ、やっぱり。(満面の笑みを浮かべながら周りも見渡し)考えていいのよ。それをどう、どう超えていくだけど。苦しいから開き直れっていうのは僕はすごく嫌いで、やっぱ考えて欲しいんだよね。野球は本来、“考えるスポーツ競技”だからね。考えて、考えて苦しんだ上で結果を出すしか前に進めない。僕は、それはそれで良いと思う。苦しんで良いと思う。 また、イチローさんがバッティング練習でいまだ衰えない技術と打球を披露したあとには、捕手を務めた3年生・黒崎将太さんが質問。 黒崎さん:3年生の黒崎です。(イチローさんはボールを)見逃したな、というタイミングでバットが出てくるイメージでした。 イチローさん:すご〜い、そんなこともう分かったの。見逃すと思ったらバットが出てくる、それは僕が目指しているところ。キャッチャーがそう感じているのは僕はすごく嬉しい。 イチローさんは実際にバットを使って、打つ角度、タイミングなどその極意を惜しみなく生徒たちに伝えました。 ■「“無駄”なことができない危険がある」Q.国学院久我山の選手に少し心配な点がありましたイチローさん「まあ、とにかく考えてますよね。練習ひとつ、どうやったら効果が生まれるのか。“無駄”なことができない危険があるんですよ。もう合理的に練習も進めていく。しょうがないですよね、時間がないから。当然なんですけど、でも“無駄”なことできない。“無駄”なことから学ぶことがやっぱ多いので、それができないのはかわいそうでもあるけれども、でもそれはしょうがないんだ。(無駄なことは必要?)“無駄”なことはできるだけやったほうが良いですよ、じゃないと合理的になれないでしょ。頭で理解しているだけのケースって今、多いと思うんですけど、それは危険だと思いますね、本来は」 無駄なことができなければ、新しい発見も生まれない。イチローさんは、選手たちが見落としがちな、わずかな隙を指摘します。 実戦指導の最後は、ベースランニング。 イチローさん:(ベースを駆け抜けるとき)ベースタッチは、もうどっちでも良いよ、右足でも左足。でもやっちゃいけないのは(歩数を刻んでベースに足を)合わせること。整備された(グラウンドの)状態でどうやってミスを誘発するかって考え方。甲子園では特に(グラウンドが)きっちり整備されているので、ミスはなかなか起こりにくい。そういうプレー(さきほど指導したベースランニングもそのひとつ)を入れていくと相手は嫌がると思うね。あっ、久我山はちょっと違うな、と。頭を使った野球をするなって印象が、パッてそのワンプレーで植え付けられるので、相手は、それだけで相手は怖いと思う。 イチローさん「力の差が明らかにあれば、まあ考えなくたって、その勝負は勝てる。けど、力の差がそれほどでもない、対等であるなら、(野球を考えるのは)当然ですよね。一発勝負、一回も負けられないですからね高校野球は。それでそんな偶然は続かないです」 国学院久我山での2日間の指導を終え、イチローさんが感じたこと。 Q.楽しそうにやってましたねイチローさん:楽しいですもんだって、楽しいよ。 Q.この学校が感じさせてくれた手応えはイチローさん:頭が良い。飲み込みが早いし、すぐに取り組む姿勢も持っているし。これは制限があるから、彼らの特徴が生きているような気がしますね。なんかDNA(イチロー野球、イチローさんが高校生に向き合い伝えたいこと)を受け継いでくれるんじゃないか。考え方とか取り組む姿勢とか(腕を組んで噛みしめるように)それってなんかこれからも、続いてくれるかもしれないって期待感はありますね。 指導を受けた齋藤誠賢選手(2年):春も夏もどちらもチャンスがありますし、(昨年夏に優勝した)智弁和歌山の上をいけるように(決まれば)センバツと夏、どちらも頂点を取れるように頑張りたいです。 ■アマチュア指導イチローさんは2019年12月に学生野球資格回復研修を受け、20年2月からマリナーズでの活動がないオフシーズンに限り、高校生や大学生への指導が可能となっている。 ■イチローさんのアマチュア初指導20年12月、強豪・智弁和歌山高校を3日間指導。指導の最後に同校野球部員に「ちゃんとやってよ」との言葉を残すと、昨年の夏の全国高校野球選手権・決勝で、智弁和歌山は智弁学園を9−2で下し、21年ぶり3度目の全国制覇を果たした。(11日11:46)

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