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“1日で100万円”の文通費 見直し“断念”の真相

■「絶対に無理」幹部が漏らした本音
「だから絶対に無理なんだって」ある自民党の幹部は語気を強めた。国会議員に月額100万円支給される文書通信交通滞在費の使いみちの公開を今国会では実現できないと言う。この言葉の通り、今国会での文通費見直しは見送られることとなった。各政党が合意しているはずの日割り支給に改める法改正すら実現できなかった。一体なぜ、このような事態となってしまったのか。 ■「国会の常識、世間の非常識」 いわゆる文通費は、国会議員の給与やボーナスとは別に「郵送費」や「交通費」などの名目で国会議員1人あたり毎月100万円が支払われる。しかし、使いみちの基準や範囲はあいまいで、税金がかからず、領収書の提出義務もないため、国会議員の“第2の給与”と揶揄されている。 文通費の見直し議論は、10月31日の衆院選で初当選した日本維新の会・小野泰輔議員のSNSへの投稿から始まった。「国会の常識、世間の非常識」というタイトルの投稿で、小野議員は10月の在任期間がわずか1日にもかかわず10月分の文通費が満額100万円支給されたことを暴露したのだ。今の法律では、国会議員の給与である歳費は日割り支給になっているものの、文通費には日割りが適用されていないからだ。この問題は、あっという間に知れ渡り、世論の強い批判に晒されることになった。 日本維新の会は、10月分の文通費の寄付を決定。自民党の茂木幹事長も「全額支給には違和感がある」としたうえで、全額を寄付することを早々に発表した。さらに与野党は、文通費を日割り支給に変更する法改正を12月の臨時国会で成立させる方針で一致し、問題は一応、決着したかに見えた。 ■「日割りだけでは緩い」 しかしその後、「身を切る改革」を掲げる日本維新の会・松井代表の“強い意向”で状況が一変する。「日割りだけでは緩い」というのだ。 日本維新の会は国民民主党とともに「日割り」に加え、「領収書による使いみちの公開」と「未使用分の国庫への返納」も可能にする法改正案を提出。後を追うように、立憲民主党も同様の法案を提出した。 日本維新の会の馬場共同代表は、使いみちの公開などに強くこだわる理由をこう説明する。「日割り先行で同意すると、もう二度と文通費の議論はできなくなる。完全に無視される。これまでそういう経験を何度も積み重ねてきた」 振り返ってみると、同じようなことが2009年8月の衆院選でもあった。在任期間わずか2日の議員に対し、給与と文通費が満額支払われたのだ。この時も世論の批判を受け、翌年には給与を日割りにする法案が成立。しかし、文通費に関しては、日割り法案への合意が得られず見送られ、気が付けば10年以上の歳月が過ぎていた。 ■自民党に渦巻く維新への不信感 一方、自民党は使いみちなどの公開については消極的だった。自民党が唱えたのは「日割り先行論」。臨時国会では文通費の日割りを可能にする法改正をまずは先行させ、使いみちの公開などについては継続議論とすることにしようという主張だ。 世間では領収書の添付や使いみちの公開は当然で、なぜ自民党は使いみちの公開に二の足を踏むのかという意見も多かった。しかし、自民党内には一切折れようとしない維新への不信感が渦巻いていた。「維新はこの問題を長引かせることでメディアの注目を集めたいだけだ。結果がどうなろうと関係ないんだよ」 ■行方不明のボール その後、与野党の協議は膠着状態に陥る。野党第一党の立憲民主党は「ボールは自民党にある」と主張。一方の自民党側は、日割り先行を野党に提案していて返事を待っているという立場で「ボールは野党にある」と言う。 そして、会期末を翌日に控え、自民党がようやく動いた。日割り以外については、「早急に合意が得られるよう最大限の取り組みをすすめる」「このための各党会派による協議の枠組みを立ち上げるものとする」と記された文書を野党に提示した。しかし、これまで自民党が主張していたことと大差はなく、野党はこれに応じることはなかった。結局、日割りですら与野党の合意を得ることは出来ず、文通費の見直しは先送りされることになった。 ■自民はなぜ「使いみちの公開」応じない? なぜ進展しないのか?自民党側に話を聞くと、簡単に「今すぐやる」と言えない事情が垣間見える。自民党の幹部はこう話す。「使途の公開をするにあたっては、まず『何に使ってよいのか』の定義付けをする必要がある。他にも領収書の公開方法など、詳細を詰めるにはかなりの時間がかかる。そんなに簡単にできるものではない」こういった事情から、別の幹部は「政権与党には責任がある。言いっ放しの野党とは違う」と声を大にする。 また、「全会一致」の慣例もネックになっている。国会では通常、多数決で法律がつくられていくが、国会議員の“待遇”に関わることは「全会一致」で採決することが慣例だという。そのため、事前の与野党合意がより一層大事になってくる。 ■自民党議員が明かす懐事情 しかし、自民党内からはこんな“本音”も聞こえてくる。「そもそも、こっちは日割り以外をまとめる気がないんだから」その背景には、使いみちの公開や国庫への返納を実現すると、次は文通費自体の存在意義が問われ、最終的には「文通費の廃止」につながることへの警戒感がある。 ある閣僚経験者が国会議員の懐事情を話してくれた。「文通費の100万円は東京と地元の事務所運営に全額使用している。残りは歳費の手取りで30万ちょっと。妻からは『県会議員の頃のほうがよっぽどよかった』と嫌みを言われるよ」 日本維新の会は、文通費見直しに向け党内討論会を始めた。一方「時間がない」と主張していた自民党では、議論が始まる様子は見えない。来月召集される通常国会の会期は最短で150日。時間はたっぷりある。文通費の今後に注目したい。 TBSテレビ政治部 与党担当田原昇平(20日22:55)

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