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「最低賃金」過去最大引き上げ、これからどうなる?森田正光さん【政治をSHARE】

過去最大の引き上げ額となった2021年度の最低賃金。「日本は本当に豊かなの?」「メリット・デメリット」「低賃金にどう立ち向かうか」の3つのポイントを柱に「NOYOUTHNOJAPAN」代表で大学院生の能條桃子さんとともに考えていきます。ゲストは、気象予報士で、実は経済通の森田正光さん。時に「雲をつかむような」わかりにくい経済の話をやさしく解説してくれます。
久保田智子キャスター:政治について若者の目線を大切にお送りしていく番組「政治をSHARE」。今回のパートナーは、「NOYOUTHNOJAPAN」の能條桃子さんです。今回のテーマは「最低賃金、これからどうなる?」ということなんですが、このテーマを選んだ理由を教えてください。 能條桃子さん:「最低賃金が上がる」というニュースを見て、私たちの生活がちょっとは良くなるのかなと思ったというのがひとつです。あとは、政治に関心を持つ若者を増やしたいと思っているなかで、最低賃金など「働く」ということは実は政治と密接に関わっており、もっと知ればもっと政治に関心を持ちやすくなると思ったので、このテーマをリクエストしました。 久保田キャスター:先月、2021年度の最低賃金の改定について厚生労働省の審議会が行われ、全国平均時給が28円引き上げの時給930円となりましたが、この数字自体もどのように受け止めれば良いかよく分からないですよね。最低賃金は上げるべきという人もいれば、上げない方がいいという人もいて、意見が割れています。今回は「なぜ上げるべきなのか」「なぜ上げてはいけないのか」も含めて、最低賃金から私たちの労働環境についても考えていきます。ゲストは、経済を俯瞰して語れる、気象予報士の森田正光さんです。 森田正光さん:そもそも、私がゲストになる経緯を話します。久保田さんに「経済に詳しい人を知りませんか」と聞かれまして、それなりにいろいろな本を読んでいますから「この方どうでしょう、この方どうでしょう」とお知らせしました。そしたら、そこまで言うならあなたが出ればということで、出演させていただきました。専門家ということではありませんが、少しだけ知識があります。 久保田キャスター:実は森田さんは、経営者でもあり、株式のトレーダーでもあります。天気だけでなく経済についても予報してもらいます。 ■日本は本当に豊かなの? 久保田キャスター:ポイントの1つ目は「日本は本当に豊かなの?」ということで、日本の現状を確認したいと思います。能條さんはどう思いますか? 能條さん:経済大国と言われることもありますが、一個人としては疑問に思うことがあります。それは、経済的に将来に不安を感じている人も多いし、精神的にも自殺が多いなどの問題もあるからです。 森田さん:1つだけ確認したいことが「政治」についてです。「政治」「政治」とみなさんは言うけれど。「政治」とは実は「分配」のことなんです。お金のあるところからお金の少ないところにお金を「分配」して、できるだけ平等にし社会を安定させることが「政治」なんです。その中で税金が1番だと言ってもおかしくないくらい重要です。それを踏まえた上で、日本が豊かなのかどうかというと、日本は圧倒的に豊かです。 久保田キャスター:豊かなんですか? 森田さん:はい。なぜかというと、日本全体のお金というのは、3月末時点で1946兆円ほどあると言われています。視点を広くしマクロで見ると、こんな豊かな国ないですよ。変な言い方だけれど。 久保田キャスター:じゃあ「分配」してくださいよ。 森田さん:その「分配」をするための1つの方法として、最低賃金があるんですよ。つまり、企業に滞留しているお金を労働者の方に戻さないと給料がどんどん下がってしまいます。一方で「下方硬直性」というものがあって、賃金は一度引き上げると、そこから引き下げることが難しいんですよ。バブル崩壊後、日本の経営者が「どうしよう」と行き詰まっていたのがこの数十年です。だから最低賃金を上げることは良いんだけど「上げ方」とか「上げた後にどうなるか」とか「海外との競争はどうなるか」とかを考えないといけないんです。 能條さん:「下方硬直性」はあるけれども、個人当たりの所得が下がっているわけじゃないですか。それは最低賃金という形ではなくて、企業が例えば非正規雇用に変えるなどの違う方法を使って、下がるようにしてきたということなんですか? 森田さん:非正規雇用の人が1990年代から増えてきましたよね。それは1つの原因だと思います。 久保田キャスター:海外の例を見ると、アメリカは州によって違うんですけれど、ニューヨーク市で言うと最低賃金は15ドルだから、日本でいうと1600円くらいですね。一方で、日本は930円ということですが、どう考えればいいのでしょうか?他にも、OECDの平均賃金の統計を見ていくと、日本はG7では最下位です。 森田さん:比較が違うと思います。日本も平均年収は420万くらいにあるけれども、若い世代はそんなにもらっていないと言いますよね。一方で数千万もらっている人もいるわけで。だから、比較をカテゴリー分けした方がいいと思います。私の物差しでいうと、マクロ的視点で、どの国がどれぐらいお金を持っているかということです。 能條さん:「再分配」で言うと、何が物差しになりますか? 森田さん:「再分配」は、上位5%がどれくらいお金を持っていて、お金を持っていない人たちのグループがどれくらい持っているかの比率だと思います。 能條さん:今の日本の問題は中間層が没落しているところだと思いますが? 森田さん:おっしゃる通りです。中間層を増やすために、最低賃金の層を上に上げて、所得が高い層を税金か何かでとにかく下げるということです。いまの日本は上の方に所得がたくさんあって、逆三角形の分布になってしまっています。それを長円形にするのがいいと思いますね。 ■最低賃金引き上げのデメリットは 久保田キャスター:ポイントの2つ目は「メリット、デメリット」ということなんですが、メリットの話はもうすでに出ているので、ここでは特に最低賃金を引き上げることによるデメリットについて議論します。 森田さん:「生産性」の問題なんですよね。例えば、時計を1日に3個作れる人と、10個作れる人を同じ賃金にするわけじゃないですか。「生産性」で、時給1000円以上のものを作らずに、500円分しか作らない人に対して、超過して給料を支払っているわけです。その場合どうやって調整するのかというのは、難しい問題ですね。 久保田キャスター:それって逆も起きていませんか?超過して作っているけど、最低賃金しかもらえないっていうこともあるわけですよね。 森田さん:そうなんです。さっきの例えで言うと、1000円以上作っている人たちから、500円しか作れない人たちに、お金を回すんです。そうするとなんで私から持っていくの?と不満が出るんです。 能條さん:たぶんそれが今回の「最低賃金引き上げ」のニュースがあって、かなり中小企業からの反発があった理由なのかなと思うんですけど。ただ、同時にいまのサービス構造って、同じものを作る人のなかの「生産性」というよりも、産業別の「生産性」の問題なのかなと思うんですが。 森田さん:コンビニとかカフェとかは、だいたいいま同一労働同一賃金になってきていますよね。ただ、もっと高いサービスのところに行くと、どのくらい払っていいのか分からないですよね。中小企業というよりも、お金を支払えない企業と言った方がいいと思うんですけど、お金を支払えない企業っていうのは、たぶん時代から取り残されている企業が多いです。 久保田キャスター:つまり「最低賃金引き上げ」を導入することによって立ち行かなくなるのであれば、そこは淘汰されなければいけないということになるんですか? 森田さん:そうなんですが、本当にそういうことでいいのか、というのは私も分からないところです。 久保田キャスター:中小企業のみなさんも一生懸命やってギリギリのところでやっているわけですよね。 能條さん:でも、日本の経済状況の問題というのは、中小企業がすごく多くて、今まで日本の良さでもあったけれども、結局グローバル化していく中で、日本が世界と渡り合えない理由にもなってしまっていると思います。結局は政治家であったり、これを決めた人たちは、表立って言っていないけれど、淘汰されるべきと思っているからなんですかね。 森田さん:それは本当は私は言いにくいんだけれども、変わらないといけないとは思っています。変わらないといけないと思っているんだけれど、変わり方が激烈だと社会的な混乱を伴いますよね。最低賃金を上げて、その分をどこから持ってくるか議論のわかれるところだけれど、そういうふうにならざるを得ないと思います。ただ「政治」が強い介入をもって、お金があるところから回しなさいという仕組みができればいいんです。仕組みができずに「最低賃金引き上げ」となると変なふうになるんです。 能條さん:「政治」が調整するっていうのはあると思う一方で、最低賃金が上がる分、物の値段も上げようというふうにすればいいんじゃないですか。物の値段が安すぎて結局賃金も下がっちゃうっていうのを解決できる気がするんですけれど、なぜそこで物の値段を上げよう、値上げしようってできないんですか? 森田さん:それは競争という原理が働くから、A社B社C社の3社があった時、品質が良くて安い物を選ぶ消費者のマインドの問題だから、そこを変えるのは難しいんです。 久保田キャスター:それは日本に限らず、世界どこでもそうじゃないですか?日本だけデフレが続いている気がします。 森田さん:その理由の1つは、労働者の声が小さいからです。働いているなかで「賃金上げてくださいよ」「物の値段上げましょうよ」と提案できればいいんです。 ■低賃金にどう立ち向かうか 久保田キャスター:ポイントの3つ目の「低賃金にどう立ち向かうか」に入ってきていますが、立ち向かうためには「みんなが集まる」必要がありますか? 森田さん:1人ではどうしても発言力が弱いですからね。1990年代後半から2000年代になってからの問題点は、1人1人が個別で意見を言わなくなったことなんです。 能條さん:言えなくなった背景の1つは非正規雇用の問題があると思うんです。また、労働者の権利の意識が弱いから企業が値上げをせずにその分を労働者側に押し付ける方でなんとかやり過ごしているというのあると思うんですけれど、声をあげるために「誰にどう声をあげればいいのか」分からないんですよね。 森田さん:労働組合の組織率っていうのが1970年は35.4%あったんです。2020年は17.1%まで下がっているんですよね。例えば、何人かが集まってSNSで発信しても影響がないならそれもやらなくなってしまいますよね。 能條さん:労働組合がやっていたように自分たちの賃金をあげろといえば、その企業ごとには改善するかもしれないですけれども、最低賃金とかは企業というよりも政府が決めているじゃないですか。 森田さん:そうなんです。私が思う解決方法は過激なんですが。言ったら問題かもしれないんですけれども、AI(人工知能)でこの人間がこれくらい稼いでいるから自動的にこちらに回しますよっていう仕組みがマイナンバーを通じてできたら理想なんじゃないかと思っています。もちろんこの仕組みをチェックする人間は必要なんですが。 久保田キャスター:えー。ちょっと抵抗がありますよね。 森田さん:そうなんですよね。 久保田キャスター:つまりは、正しい「分配」をするためには、正しい状況把握が必要っていう指摘ですね。 森田さん:はい、そういうことです。 能條さん:AIじゃなくても実現できそうじゃないですか? 森田さん:いや、人は嘘をつくから、AIで自動的に「分配」しないと実現できないんです。ただ、もちろんチェックする必要があるから、よっぽど信用のある人間を選ばなければいけないんですが。ただ、この話はちょっと言い過ぎかもしれません。 久保田キャスター:最後に、能條さん何かありますか? 能條さん:昔は、団結するためのプラットフォームが労働組合という形であったり経済状況が上向きであったりで「100円上げて」と言えたのかもしれないが、今は状況が違っています。若い人たちが自分たちでプラットフォームで声をあげないと、他の国のようにはならないと感じました。 (2021年8月13日放送)(07日13:10)

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