会場の模様

シンポジウムの模様

京都ノートルダム女子大学特任教授
室田 保夫

北海道教育大学教授
二井 仁美

第3回シンポジウム実施報告

「人間を見捨てなかった男 留岡幸助」

公益財団法人山陽放送学術文化財団は12月4日(火)、岡山ゆかりの福祉分野の先駆者の足跡をたどり、その生涯と功績を議論紹介するシリーズ・シンポジウム「慈愛と福祉の先駆者たち」の第3回「人間を見捨てなかった男 留岡幸助」を開いた。会場の山陽新聞社さん太ホールは市民や福祉関係者らで満席となった。

出演者
京都ノートルダム女子大学特任教授 室田 保夫
演題:近代日本と留岡幸助-その思想を中心に
北海道教育大学教授 二井 仁美
演題:家庭学校にかけた留岡幸助の大構想

備中高梁に生まれた留岡幸助(1864-1934)。町民の子として理不尽な経験をしたことから「士族の魂も町人の魂も神様の前では平等である」と説くキリスト教に傾倒。高梁教会で洗礼を受けて牧師となり、北海道の集治監(監獄)で教誨師を務めた。そして1899年、更生には家庭的な環境での教育が重要だと感じ、東京・巣鴨に「家庭学校」(現東京家庭学校)を創設。5年後には北海道にも分校を開設し、働きながら学ぶ生活を通じて自立を支援した。その後も、感化救済事業や慈善事業、教育、地方改良、監獄改良を推し進めるなど、社会事業に生涯を捧げた。

シンポジウムでは、社会福祉史のオーソリティー・京都ノートルダム女子大学の室田保夫特任教授と家庭学校を中心に教育史などを研究している北海道教育大学の二井仁美教授が講演・討論した。
室田特任教授は留岡幸助が当時の格差社会に目を向け、家庭学校と地方改良をも推進するなどしており、「留岡は新しい村づくり、ユートピア的な社会を目指したスケールの大きい社会事業家だった」と強調。二井教授は、「能く働き、能く食べ、能く眠る」生活を通して「流汗悟道」(汗を流し働くことで生きる道を会得する)の教育を行い、卒業生が農業で生活できるよう「生きる道を用意した」と話した。