岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2020年5月10日

「パリ開城」

2カ月続いたフランスのコロナウイルス防疫のための、隔離条令が解除されて、5月11日から外出禁止もゆるやかになり、徐々に商店や事務所が開かれ、経済活動が復活する。といってもまだカッフェ、レストラン、劇場、映画館、美術館などは閉まっていて、6月に入って徐々に再開されることになっていると言われる。感染予防のため学校も閉め、商店も事務所もバッサリと突如、一切人の集まる接触を断ち切ってしまい、生きるために最低の、食事の買い物だけに絞ってしまったのであった。ビジネスのために集まっている都会パリだから、郷里や親元、セカンドハウスのある人はさっさと子供を連れて疎開して逃げ出し、人影の少ない静かなパリの2ヵ月であった。大体旧貴族出身階級には、姓の真ん中にDE(ド)がつくと教わるが、「何々村の誰某」となる。この(の)が(ド)に当り、後ろは自分の旧領地をさしている。この空になったパリに残っているのは、それもないエトランジェ(外国人)とか、フランス人の持てない層だけが残っているのを痛感し、郷土と結びついているフランスを眺めた思いだった。

テレビ報道で議会の首相声明など頻繁に報道されるが、上院でも国民議会でも、500人を越す議員のはずなのに、20人ほどの議員だけパラパラ出席、空席ばかりのところで、首相が実に熱心に説明演説するし、手は抜かない。その上首相の演説のスグ脇の足もとが自席のおばさん議員、聞いているようでなく、SNSに見入っている姿までばっちりテレビ画面には入る。気の毒みたいだが、とにかく力強く長く喋って、賛成・反対、熱心な議論が要求される国なのである。そしてテレビや電波では、記者発表の実況や、新しく出る対策条令の解説が一日中繰り返される。30分おきにニュースや天気予報の聞けるチャンネルは有難いし、政治インタービューや政治議論専門の報道だけが数チャンネルもあるフランスなのである。グルメだとか、変なコメンテーターのお喋り番組は余り見ないでも済む。パリだとか地方大都市には、その都市専用のチャンネルがあって、都市専門の情報ばかりを一日中繰り返し解説し、質問に専門家が答える時間も多く取られていて、籠城生活も電波の時代である。

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