「穴あきジーンズ」

パリにミニコミ無料紙のOVNIオヴニーというのがあって、1979年4月から月に三回発行、2万部でスタートしたのが、現在は月二回で各6万部、内2万部は日本にも配布されており 、40周年をむかえる。記念パーティに招かれたので出席する、といってもこの会社らしい家族的なアンチームなパーティだが。正式には1974年にいりふね出版という会社を起こし、イリフネ・デフネという無料広告誌を始めてからでは45周年になる。当時は日本の経済大発展期で、外国旅行も自由化され、企業の進出、パリに住む人も拡張で、そんな人たちが対象の無料情報誌、広告で維持の先駆けだった。日本に留学したベルナール・ベローさんと、その奥さんの小沢君江さんが、複雑で使うのが面倒、大使館にもないヨーロッパにたった一台という、手動の小型日本語活字のタイプライターを手に入れて始めたのだった。写植が出来、ワープロになり、電子で自由自在な現在とは、隔世の感がある。在留邦人が増加して、70年代やっと日本円札も交換出来て、使えるようになったのだが、1960年代はまだ日本円は紙屑でエクスチェンジでも受け付けてくれない紙幣だった。そんな頃手書きのガリ版刷で回覧板のような情報紙を始める人や、日本語書店を開き情報誌を作る人、大手旅行エージェントで情報紙をはじめる人も出た。しかし現実は厳しく興隆の変遷多く、特にバブル期の弾けた後の日本人対象では、広告が入らなくなって、みんなが消えて今は無い。唯一続いて生き残るオヴニーの魅力は、ベロ-さんの魅力で、学生運動の名残のような反体制の香り、大手ではなくて日本のマガジンハウス出版と結びついた、現実の庶民の文化が一杯の姿勢だった。近頃はこれしか無いのでは、多少体制側も利用せざるを得ないようであるが、便利な無料情報誌で、皆の頼りにされているのである。

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