岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2018年5月11日

「外に出てパリを思う」

世界中の気候がおかしいのだと思う。4月の下旬にニューヨークは、イースターも過ぎて春だと言うのに、やっと雪が解けて、5℃~6℃という気温で日本の真冬に近い、持っていた衣料を全部重ね着して過ごした。それでいてパリのニュースを聞くと28℃に上がって、真夏並みの異常気温だと報道されていた。煙突に巣を作ってアルザス名物のコウノトリまで、冬は地中海を越えてアフリカ大陸北岸まで行く渡り鳥なのに、最近はスペイン南部やポルトガルでストップ、サボってそこで過ごすようになって、地球の温暖化だと、ニュースになっている。

10日ばかりアメリカのニューヨークで、「アートフェアー」に参加のために旅行した。40年ぶりに近い訪問である。アメリカはギラギラとした、現代文明最先端の町を思っていたが、とてもオールドな人間臭い町なのを発見してホッとした。古いレンガの建物、外に出た鉄骨の階段、埃にくすんで、人間が暮らしているなーと思う都会を発見、懐かしかったのである。考えて見ると、現代のパリは真っ白なケーキの箱が並んだみたいな町である。50年前に当時の文化大臣アンドレ・マルローの発案で、マルロー法と言うのができて、建築家の意志を尊重して、建てられた当時のような白い石の壁を復元するべきであると、50年来セッセと磨き、壁の表面が黒ずんでくると、噴射で削り取ってまで、10年毎に磨いて初期の状態を維持する町に変貌しているのである。半世紀前始めてパリに着いた頃は、煤煙の煤と雨風にうたれて数100年以上経て、薄黒い灰色の石の壁、石膏壁の町なのであった。現在は綺麗で清潔なのだろうけれど、人の集まって住む都会の味、人間臭さが無くなっているのに、あらためてニューヨ-クの町に立って、気付かされた次第であった。

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