「自分の誕生日」

マレー地区(沼地区)というのは、昔セーヌ川の中州分流地帯で沼だったからで、16世紀頃貴族屋敷が沢山建てられて、現在は歴史保存地区となり、今は逆にファッションの現在の一等地になっている。旅行者が少ない、本当のパリジャンの集まるブチックやレストランが集まり、若い人の超一等地にこの10年ばかりはなっている。そのもっと以前は薄汚い古い屋敷の門の並ぶ、地味なところだったので、店舗が安く入れたから、若い店が集まってきたのである。1930年代には一掃して取り壊し、現代ビル街にする計画がパリ市で決められたが、一転して歴史保存地区となり、1962年のアンドレ・マルロー法によって、建設当時のような元の白い壁の建物に戻して残す修復作業が進み、その記録の50年間の歴史回顧展だから、地味であるが4か月間続いている。成程出口の一室が、「日本人画家アカギコウジロウが、描いているが、現在も画家の興味を引き後をたたない」で地区の教室のスケッチコンクールの作品が並んでいる。私の2点は、40年前に描いたもので、白くなる前、まだ当時の黒っぽく灰色の壁だった頃の、ここの美術館が所蔵の作品である。ゴッホだって、セザンヌ、マネだって、自分の作品がこのように美術館の壁面に活用されているのを、自分の目で見ることは出来なかった。それを家内と二人と見ることができるなんて、長生きしたお蔭だなーと、何よりの誕生日祝いにしたのである。

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