「ブト-に行く」

 私の休憩は、近所のパリ日本文化会館である。ときどき人集めの宣伝に、お招きを頂きでかける。沢山人が押し掛けるものはお招きもないし、お金を払って観に行くほどの趣味も時間もない。興業という世界は、実に招待券や無料券が多くて、市の老人助成や演劇批評家の役得まで、実際に払って観ている客はどのくらいだろうと、何時も思う。浮世絵に続いて、日本の漫画文化が現代世界に影響を与えているのが20世紀後半から21世紀だが、ブトー(舞踏または闇黒舞踏)という文化も日本発信で根強いファンを獲得してきた。裸・剃髪・白塗り、5頭身の短足の日本人体型が、漫画チックな印象と効果を生み出していて、逆に脚の長い西欧人が間の抜けた印象になるのが、ブトーの不思議で、バレーやモダンダンスだとこんな具合には行かない。土方巽が1968年頃からヨーロッパの前衛路上ショーで、土着の怨念が売り物の、スタイルを確立した。近年は麿赤児の大駱駝艦が、一ヵ月近いヨーロッパ定期公演を毎年開くが、日本人の観客は少ないのに男女、禿げ頭の中高年から若い人まで、こちらのファンで満席なのに驚く。

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