「2015間近か」

 西洋風の家となると、暖炉の整った大きなサロンのある家を思う。パリの屋根の上の風物は、テレビアンテナの遺物の他、素焼きの赤い植木鉢を伏せたようなものの並びで、始めての人は、あれは何でしょうと上を見上げて必ず質問する。各部屋の暖炉から、壁の中をぬけ続いた煙突である。今はセントラルヒーティングになり、暖炉は使われなくなったが、大きな建物の屋上キューポラ煙突と共に、まだまだ前世紀から沢山残っている。2015年1月1日より、パリ市およびパリ圏の建物では、室内暖炉の薪使用が完全禁止される。二酸化炭素増加の公害防止のためで、エコロジスト(環境主義者)の勝利である。もう建物の中での喫煙は、2009年から健康のために全面禁止となっていて、煙草を吸うために門前の道路に立って一服のひと時が、パリ光景の日常になり、そしてまた事務室や自宅に戻る。
 ル・サロン、サロンドートンヌ、国民美術協会、次々と団体公募展がこのシーズンは続く。写真が美術としての進出と、漫画風の作品が若い人から沢山出品されて、すっかり時代の好みが移っている。目で見て理由や訳の分かるものの方が、長い間全盛だった、〇や△、色の染み、判じ物のわけの分からない、大きさだけが脅しのような作品より目を引き、変わってきている。
 毎年有名なロン・チボー・クレスパンの、音楽演奏コンクールがシャンゼリーゼ劇場で開かれた。今年はバイオリンの年だったが、若い音楽家の国際登竜門として、重く見られている。やはり聞き慣れた18世紀19世紀のドイツやロシアの作曲家の曲が、心落ち着き観賞でき、現代音楽はガーシュイン位までだろうか。音楽家には、コンサートホール、教会堂、個人サロンで、コンサートが繰り返し、パリにはいつも溢れている。

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