「画像の秋」

 彼のスタートの頃は、パリでカメラマンというと、ファッション写真が全盛、女物コレクション、男物コレクション、美容、ファッション雑誌の仕事で満杯だった。今はもう余り需要がなくなって、デザイナー、メーカーが記録して、宣伝で配るから、そのフォトで足りるようになり、メールで送り、インターネットですぐ出るので、雑誌自体がファッションの速報性には頼れなくなっているのである。次に来たブームが、時計業界だった、つい数年前までスイス製高級時計の業界が巻き返しブームの時代があり、日本の雑誌業界も広告が入るので仕事殺到、スイスの発表見本市に通うのが続いたが5年前に終わる。ファッションの次は、グルメが伸びて料理ルポルタージュが増え、今は続いてパティシエー、製菓業界の取材が日本の雑誌に溢れる。この5年はチョコレートの独壇場、今はチョコレートデザイナーの発表会が、まるで昔のモード業界の発表会のようなもので、年に春夏、秋冬二回追いまくられるという。有名菓子デザイナーとなると、世界のライセンスが殺到するビジネスになり、フランスには次々新人の独立、旗揚げがブームなのだそうで、特に高級チョコレート屋の分野は、日本からの取材がフィーバー、独占のように押しかけて目立つそうである。先月、パリのポルト・ベルサイユ見本市会場で開かれた第17回チョコレート見本市など、パリジャン一般客の人気も、試食があるからラッシュで満員だったが、取材の方も一週間の会期中、日本からの仕事が時間刻みの撮影の忙しさで、私の撮影もウエイティングだった。
 今月11月は、パリ写真月間、美術館でも、画廊でも、今は写真が美術作品として扱われ、大きな企画写真展が目白押しである。洋画展なんぞと絵を並べても当たり前で、余り関心を惹かないのが時世で、マンガに頼るか、人を吃驚させるような空間デザインに頼るのが、現代美術である。

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