「雪の降ったパリと田舎のこと」

 先月は3日ばかり、南仏プロバンス地方に行ってきた。パリから南に700キロ、アビニヨンが中心だが、その北部には南ほど人が行かず、あまり日本にも知られていないプロバンス地方である。TGVで2時間半ほど、パリ・アビニヨン間ノンストップの列車が走る。それから車でワイン畑の丘陵を少し逆戻り。丁度ボジョレーヌボーで、日本が騒ぐ日だったが、そのもう一つ南の、ローヌ河沿いのこの一帯も、豊かな太陽に恵まれた「コーデュローン」と呼ばれるワインの宝庫。みなが普通に家庭で飲むワインを、量で絶対的に押さえている。早出しの新酒でお祭りも勿論、各農協で盛んである。
招かれて行ったのは、ローダン・ラルドワーズ(Laudunl’Ardoise)と言う市で、知られない所らしくミシュランのグリーンガイドブックに、市の名前さえ載っていない。大丈夫かなと思ったが、市がイベントホールを建設して、この15年来、毎年この時期に、芸術フェスティバルのイベントを開くのである。テーマ招待国を指定して開き、アフリカ、スペインに続いて、今年は「日本」ということになって私のところにも、パリ日本文化会館から紹介されて、話が来たのだった。日本から作品を運ぶのでは大変だから、パリからならと言うところだろう。行ってみて驚いたが、紀元前5世紀から、ローマ人がこの市の背景の丘の上の台地に、植民地都市を築き、軍団を置き、紀元500年まで、千年位栄えていたのである。それが埋もれてしまっていたのを、発掘を続け、現在も遺構再建中で、パリよりも古く、重要だった町跡である。丘の廃墟に立つと、ローヌ河とそれに沿った谷、ワイン畑の丘陵が一望、遠景の山脈山並みに囲まれ、遠くにはローヌ河源流のスイスアルプスまで望めて、古代は最高の地の利の場所だったのがわかる。

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