岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2010年9月10日

「秋の季節が始まった」

 もうマロニエの実が茶色になって、写生をしている上にゴツンと落ちてきて、吃驚させられる。要注意の季節である。バカンスが終わって、学校の新学年度がはじまり、早くもストライキや、デモである。休暇中は、文句、不満も休暇していたのである。年金制度の改革、学校制度の改革、何でも改革は種になる。良くしようと思っての努力なのだろうが、何でも反対なのでは、ドウスリャいいのと、言いたくなる。
 昨今の政治、社会問題は、ジプシーである。日本人には、ジプシー音楽とかバイオリン、ロマンチックなのであるが、差別用語なのだそうで使えなくなり、英語のROMからきた、ロムという言葉が使われていた。しかしこれでは英語であって、フランスの公用語には使えない訳で、「ジャン・ド・ボアイアジュール」(旅の人々)と、持って回った仏語の正しい表現で、政府見解が発表される。東欧起源なのだが、昔からヨーロッパを自由に移動して暮らしている人たちで、キャラバンにのって、寅さんみたいに、縁日から縁日、移動回転ゲーム、木馬など持って回っているのは高級だが、上下いろいろある。現代都市計画家、建築家は、凝った空間のデザインや工夫をこらすが、くぼんだ軒先、空間があれば枕を並べて、旅の人々が寝始める。住居不定者も加わって、狭いアパートから、不要になり処置に困って捨ててある家財を拾って、住み着く。結局、家主側が鉄柵を立てたり、塀を作って入れなくするより対策は無く、この繰り返しを、パリの日常に、毎日見せられている。物乞いは生活だが、泥棒は困る。地下鉄などで、子供の集団に囲まれて、盗難は日常。今では成長して、衣料品余りの時世で、捨てられている拾い物衣料でもお洒落。住人にはジプシーと分かるが、旅行者などやられても、中々の美女でしたよ、まさかあれがという始末。ヨーロッパの中は自由に動け、徒党を組んで反抗や、日常の社会生活を乱す。あまりの増加に、国家の治安のために手を焼き、国境まで連れて行き、一人に300ユーロの手当てを渡して、原籍地の国に送り出す政策をはじめたが、送り戻されるルーマニアやブルガリアも、今では同じヨーロッパ、黙っているはずない。自由、民権の国フランスが、こんな強硬策に、回りが吃驚。ローマ法王も、賛成したとか反対だとか意見発表、ロムがロム(ローマ)を、ロームがロムか、聞き取り、発音の充分でない外国人には落語である。とにかく夏休みが明けて、もう政策反対の人権擁護デモも、開かれていた。

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