ムーラン・ルージュ
 

「パリに木の芽の吹く季節」

 よく映画などで貴族屋敷の図書室などの場面が出てくるが、統一したデザインの本がズラリと並んでいる。自分用に決めたデザインでオーダーして揃えたので、本屋が作ったのをそのまま並べたようなものとは全然違った凝ったものなのだ。皮で表紙をデザインして装丁、時々は牛乳で磨いてやらなければ皮が風化してボロボロに傷んでしまう。1925年頃のアールデコの時代など、装丁デザインも美術品と同じように大切に競われて、コレクションされていた。今でも趣味のコレクターや、専門の高級書店がある。しかし、その装丁屋さんのブティックもめっきり少なくなって、近年パリの町から消えたなと思う。
 豪華本でも出来合いの書物になり、三年もすると投げ売りされるのに人が群がっている。
 町に次々に誕生するのは、額縁屋工房が実に多い。日本の経師屋さんのような感覚だろうか。趣味の教室なんかで手ほどき受けて、手軽に開けるからだろう。古い版画や、印刷物、写真、自作の作品、傷んだ家に伝わるものの額装直しなど、注文が盛んなので増えるのだろう。

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