会場の模様

津山工業高等専門学校 准教授廣木 一亮

シンポジウム岡山蘭学の群像 夏休みスペシャル

「蘭学ビックリ箱」 報告書

公益財団法人山陽放送学術文化財団は8月8日、日本に西洋の化学をもたらした宇田川榕菴が化学書『舎密開宗』を書く際に行った実験を再現するイベント「蘭学ビックリ箱」を、岡山市北区の「人と科学の未来館サイピア」で開いた。小学生と保護者合せて約200人が参加。次々に紹介される不思議の世界に熱心に見入っていた。

津山藩医宇田川榕菴(1798~1846)は、家業の医学を発展させる一方で、日本ではまだ知られていなかった西洋の化学や植物学、昆虫や音楽などを紹介。特に化学については、自ら実験して確かめながら化学書『舎密開宗』を著した。これを出版する際に榕菴は、まだ存在しなかった日本語の学術用語、酸素・水素・窒素といった元素名や、 酸化・還元・分析といった化学用語を反応や現象に合せて作った。この言葉は現在も使われている。

「蘭学ビックリ箱」には、岡山市内の小学校5・6年生とその保護者、約200人が参加。講師は「榕菴の弟子」を自任する津山工業高等専門学校の廣木一亮准教授が務めたが、廣木准教授は化学の楽しさを広めるため地域での課外活動に熱心に取り組んでおり、この再現実験もスムーズ。銅片を硝酸銀溶液につけると、まるで木の枝のように銀の結晶が育つ「銀樹」の実験や、2種類の金属板を使って電池を作る実験など、榕菴が日本初の化学書『舎密開宗』を著す際に追試した4つの実験を再現してみせた。

「銀樹」の実験では、その育成過程をプラネタリウムの壁面にテレビカメラで映し出したが、子どもたちは銀の結晶がまるで木の枝が育つように枝分かれしていく様子をはじめ、結晶の形や色などを目を輝かせながら観察していた。

プロペラも回った

また、硫酸に銅と亜鉛の板を入れて電極とし導線でつなぐと電気が発生するが、その原理を利用して野菜や果物を使った電池づくりを試みた。題して「響け!ベジタブルオーケストラ 電池の秘密」。用意した野菜果物は15種類。グレープフルーツやパプリカ、スイカなどに銅と亜鉛の板を差し込んで電池を作り、プロペラを回したり電子オルゴールを奏でていく。野菜果物の水分含有率の加減からか、電気の発生量にはバラつきがあるが、勢いよくプロペラが回りオルゴールが音楽を奏でると、会場からどよめきと拍手が起きていた。

実験を終えた廣木准教授は「榕菴さんは色々なことに興味をもって熱心に研究し、誰もしたことがないことを成し遂げました。将来、みなさんの中から一人でもふたりでも化学者が生まれてくれたら嬉しいです」と「ビックリ箱」を締めくくった。