「2025年」

 国立ギメ美術館の2月から5月まで続いている日本の「キモノ」展も、日本の老舗デパート松坂屋が集めていたものだが、日本人には珍しくなくても、昔の大名衣装の手の込んだ織物や、刺繍のキモノ、こちらの人が押し掛けて感嘆して鑑賞しているのに目をみはり、そんなものかと思う。最後の2室に現代の日仏のデザイナーがデザインした、キモノヒントの現代コスチュームがデザイン展示され、興味深かった。コシノ・ジュンコに依頼されてクリスチン・ブランという昔からの知人が、「私がまとめたんだ、日本と何度も往復したんだよ」と語る。プレス広報担当業という職業が出始めた、1970年代からこの分野で活躍の知人で、もう古い知人も居なくなってしまったが、今も彼女は頑張っているのかと懐かしかった。カタログには謝意のところに名前があるだけだが、こんな縁の下の力持ちが支えているのがパリで、道理で見事な人選と展示の、部屋なのであった。
 隣のパリ市立ガリエラ衣装美術館では1933年生まれ、1987年に54才で、世をはかなんで自ら亡くなったシャンソン歌手ダリダの没後30周年、回顧衣装展が始まっている。初めはピエール・バルマンのオートクチュール店への注文衣装だったのが、時代の変化でプレタポルテの舞台衣装に変わって行くのが面白く、晩年は日本の小林幸子並みに度肝抜く衣装と、脚線美、エジプト訛りの甘い歌声でファンを掴んでいた姿を懐かしむ人々が、押しかけている。近々ルーブル宮殿にある国立衣装美術館でも、ディオール回顧展が企画されていると聞く。衣装も美術品並みに、人々のノスタルジーを掻き立てる町なのである。

2017年5月10日 赤木 曠児郎

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