「土地の習慣」

 日本人の黒装束に固めた集団姿は、たいへんに異常に、葬儀屋でもあるまいしと、こちらの人の目には映っているのに違いない。通常、お報せを頂いたり、お報せ広告を新聞で見たら、ただその時間に参列すれば済むので、それでOKがこの国。お香典なんて習慣も無くて、無用考えなくて良くて、出すことも無い。少し花くらい持ってくる人、贈る人、団体もあるが、限られる。教会堂で式の場合には、献金籠の回って来る時もあるが、これは教会に少し落としておけばよい。ただ絶対忘れてならないのは、葬儀場入り口に置かれている参列者サイン帳、これには自分でキッチリ氏名、住所書いてこなければならない、後々まで残る出席証明なのだ。通知を郵便でもらって、出席出来ない場合は、お悔やみ状の手紙が礼儀となる。後はサイン帳の住所で、今度は必ず参列御礼の手紙が送られてくる。これがまた欠かせないのだが、往々にして日本人遺族、未亡人などは、この会葬御礼の手紙を送らないので、大層失礼で変な人達だなと思われている。もっとも、「おたちは」(御立ち葉)なんて葉書を会場で手渡して済ますような習慣も、こちらには無い。

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