岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2016年9月10日

「土地の習慣」

 暑い季節が終わった。いろいろなことがあって、あの世に行かれる方も、パリでもこの年になると少なくない。先日も日本人の古い知人が、まだ定年前の年輩の方だったが、亡くなられたとの報せをインターネットで受け、20区のペールラシェーズ墓地にある火葬場に出かける。通常フランスでは土葬が多く焼かないので、パリ市内では焼き場施設は一カ所だけ、ここしか無くて、市の中心部からは大変遠い東の端にあるのだが、日本人にもお馴染みである。ここに集まってお見送り式をして、焼却器にお送り、散会する。またお葬式だと駆けつけたが、久しぶりの日本人のお見送り、5~60人ばかりの集まった日本人が、殆ど全員黒い喪服上下で、少なくとも黒ネクタイなので、真夏の省エネ軽装姿で浮き上がって、慌てて「あー今日は日本人だったんだ」と思う始末。ただし少数のフランス人参列者は、Tシャツレベルもいる。こちらの葬式の場合だと、みんな平常そのままの平服、遺族でも茶色の靴で参列するし、別に衣装は変えない。黒服なんかで正装してお葬式に出ると、「何であいつが」と逆に浮き上がってしまうのが、パリの普通である。

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