「カッフェのテラスで」

 仕事で、関西に10日ばかり過ごし、パリに帰って来た。東西何処でも、皆が自分の仕事に追われ、生活に変わりなく、一日、一日を過ごしている。世界のニュースなんて無関係である。「鴨川をどり」を見て、幸せなものである。
パリに帰って、パリ日本文化会館での、「渋沢・クローデル賞」30周年記念講演会に出席してみる。設立を提案された慶応義塾大学の仏文教授松原秀一先生が、2日前に亡くなられたとのこと。パリでは我が家から300メートルばかりの近くに住まわれ、50年近い旅行友達の大先生だったから、ニュースに驚く。現在は東京の日仏会館が主催し、フランスと日本の、翻訳文化交流に功労のあった、若い人の業績に、毎年出される賞である。
もう今では殆どのフランス語の主要著作が日本語に訳され、読めるそうである。日本語をフランス語にはまだまだ一歩というところらしい。ミッテラン大統領の時に始まり、元大蔵大臣、現在パリ市の財政助役クリスチャン・ソテー氏が審査委員長で、「日本はこれから少子化により、老人社会のモデルになりそうで、フランスにとっても関心がある。お互いの文化の翻訳の仕事は、鏡のようなもので、自国の言葉を他国語に訳してみて、始めて逆に自分を知ることが多い。両国の委員が30年間続けてきたことは、有意義であった」としめくくった。

2014年6月11日 赤木 曠児郎

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