「ヨーロッパのGW」

 生涯に一度はパリで自分の仕事や芸を発表してみたい、こんな夢を抱く人は多い。パリ日本文化会館で、地唄舞い、神崎流四代目家元神崎えんさんの公演が二日間開かれたので、出席。パリだけで二日踊って、すぐ帰国である。「えんの会」という後援会があって、今回の公演のスポンサーのドンのような、曙ブレーキ社長とその夫人で元宝塚女優の麻美れいさんが、ホスト役で日本から来て、客席で座元を引き締め、同じ師匠の同門の友人だそうである。お座敷が中心な芸術の姿であって、劇場舞台でチケット売って成立するものとは、違うのを痛感する。日本だと、中々機会が無いが、外国暮らしの有難さで珍しいものに触れることが多い。二本の燭台に、12曲の銀屏風、檜の所作台、パリ日本文化会館も出来てもう14年になるから、雰囲気にも本格の味が揃えられるようになっている。渡辺保さんという江戸演劇の専門家の名解説に、富山清琴さんという地唄人間国宝の万全の備えで、堪能したのだけれど、どこまで外国人に伝わり、理解されるか、20分を切る踊りが二本、一夜を空けて見るのには、物珍しさの枠を超えられないだろう。これが現代日本の「ブトー」あの白塗りのお化けのようなダンスとなると、日本より逆に海外のこちらにファンが多くて、劇場は満席で入れないほど。興業として何処でも自立公演できる人気なのである。今日の客は随分違う層のようで、少し空席がある。

2011年6月13日 赤木 曠児郎

page3/3