トゥールネル河岸
 

「珍事」

 昔の修身の教科書に、アメリカ初代大統領ワシントンは桜の木を伐ってしまったが、正直に自分がやりましたといって逆に褒められたとか、正直は大切なものだと、まず教えられたものだが、この大臣も言い逃れさえしなかったら、こんな事態にはならなかったと皆が見ている。頭が良くて、シラク大統領お気に入りの忠臣、若くて一足飛びの大栄転でも、結局人間が出来ていなかったということのヨーロッパ版騒ぎであった。
 こんなことは、あまり大新聞では報道されないけれど、国民の一人一人が自覚して物事を正して行かねば、職業上の秘密、会社の秘密、役得の秘密、個人の自由の蔭に、不公平さがひろがった社会になってしまう。密告の広がる社会も敵はないが、要するに公平であれば恐ろしいことはないわけで、秘密にしなければならないような悪いことをする人への対策は日本でも起こるが、公表され批判されなければ、まともな人は堪らない社会になってしまう。
 さて、税金の申告用紙が送られて来たが、中に大蔵大臣のメッセージと署名が毎年入るが、全家庭に発送の準備の出来たところでの騒ぎ。ビニールの郵送袋を破って、全部作りかえて、新々大臣のサインも印刷し直して入れるか、これも二重の莫大な経費と時間が掛かるとなって、古い嘘つき大臣のままの名前で届いた。嘘つきなさんな、という教訓なのか、本気でやってられないなという意味なのか、家計簿の計算に頭を悩ませているシーズンなのである。


2005年3月23日 赤木 曠児郎  
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