岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2020年3月11日

「さすが人影の少なめのパリの街角で」

コロナウイルスはフランスでも大問題である。ニュースの時間を占領している。しかしパリでマスクをしている人は、殆ど見かけない。この国では顔を表に出来ないのは、何か不正な人、表に出来ない悪い人と考えられている。政府発表も「体に自信のない異常の人」、「何か症状のある人」は、他人に散らさないためにマスクをしなさいと言うのだから、「自分は健康だ」と胸を張って示したいし、マスクの人のまわりには近寄らないようにして、透き間空間ができる都会がパリなのである。マスク姿が町中に溢れ、普通になっていた東京とは大変に違う。体調が悪ければ自粛して休む判断は、大人なのだから持って居る筈だし、国民健康保険があるのだから、医師の処方で自宅で有給休養ができる。外にマスクまでして、出歩かなくてもいいのである。

フランスの挨拶は、握手とハグである。頬っぺたを左右にちょっちょっと当てて親愛の情を示す習慣である。まず名刺を取り出し、頭をぺこぺこと下げる日本流とは大変に違う。今回のコロナウイルスの流行で、最初5000人以上だったのが、1000人以上人の集まる催しは、中止するようにと法令がでた。学校、文化催し、劇場公演、パーティなども人の集まることは次々自粛・中止、地下鉄やバスに乗ったら人の集まる部屋に入る時には手を洗い、握手もハグの習慣も止めましょうとなっている。外で何時ものように絵を描いていたら、知人が通りかかり、まるであなたの国の習慣のようですと、合掌してペコペコッと、頭を下げて行った。フランス人は他人の前で頭を下げるのは、人間の平等の原則に反すると子供の時から教え込まれていて、普通は頭を下げるのを強く嫌がり、習慣の違いに驚かされることが多い。日本人にはなかなか考えられない発想なのだが、これは天皇の前に行っても、人間対人間、頭は下げないのが普通なのである。

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