岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2018年8月10日

「ジャポニズム2018」

とにかく30℃を越す日々がパリも続き、暑い。バカンスシーズンなので、みんなセカンドハウスを持つ人々や、バカンス先の緑をもとめて、パリと言う都会をみんな離れてしまい、やってくる観光旅行者の応対や、ぎりぎりのサービスの人を除いて、みんな休んでいるのである。パン屋だって土地の情報を持っていないと、簡単には手に入らない。

そんな時「ジャポニズム2018」の広告だけが、やたらと今年は目に付く。ジャポニズム=「日本趣味」とでも訳される言葉だろうか、20世紀に入ってから使われはじめた言葉だが、起源ははっきりしている。1856年にフランス人の版画家フェリックス・ブラックモンが、北斎漫画の画集を偶然手にし、日本のデッサンは素晴らしいものだと生涯その本を懐にし、芸術家の間に吹聴して回ったのが、パリの浮世絵コレクションや日本趣味の広まった起源だとされている。日本から輸出される陶磁器のパッキングの詰めに、北斎漫画の古本は利用されていたのだった。19世紀の後半、パリ万博などにも展示されて、江戸職人による飛びっきり精巧な日本の美術品がヨーロッパに大流行、輸入されインテリアに持て囃され続いていた。だから改めて2018年を漫画文化の成功を起爆点に始まる、日本文化再び大発信の年という、意味なのだろう。2016年5月フランスの前オランド大統領が、公式に日本訪問した時に、徳川幕府とフランス政府との間で、鎖国を解き日仏修好通商条約が成立した、その160周年目を記念して、フランスにおける日本文化年を開きましょうと、ポンと気前よく安倍総理は40億円の予算を内閣官房費から出して、この官製日本文化大発信、国家プロジェクトがスタートしたのである。いろいろな準備がされ、いよいよ今年2018年7月12日から正式に始まり、明年2月の末まで、沢山の展覧会、舞台公演、映像、生活文化、国のお墨付き文化紹介の催しが、次々と続く。そうなると個人で自主参加、承認のお墨付きを頂いて箔をつけ、メッキして催す便乗組み、各種公演、発表も加わって、パリやフランスに一杯溢れるという幸せ日本である。

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