「フランス流消夏法」

 秋冬のオートクチュールコレクションも、4日ほどで終わった。その前の週は男子服デザイナーの発表だった。もう今は何でもあって、着る物を選り取り見取り、値段だけの時代だから、アッと言わせてブランド名を売り込むだけの合戦である。自由平等が歌い文句だが、差別は厳然としてあるこの国だから、外国人、日本人の乗り込んで開くことなんかは、経済的関係でもあれば別として、この国のマスコミにはまず相手にもされない無視である。しかし作家当人には、発表活動をして見せることが大切なことで、桂由美さんも頑張っている。日本の織物や刺繍をふんだんに使って、柄で見せるキモノの手法を洋服に取り入れて、自分の世界を確立、ヨーロッパデザイナーに真似のできない衣服で魅了している。今まで年に春に一回だけだったが、今回は秋冬7月にも、年二回が始まった。それだけ顧客が定着して、認める人たちも現れているからだろう。
 パリに日本文化会館が出来て、20年目になる。今年から来年にかけていろいろな記念催しが始まった。幕開きは狂言三番叟の、縁起物でとして、人間国宝の野村萬氏が「巨勢の金岡」という、絵描きをテーマの狂言を見せた。絵筆二本握って迫る所作、絵描きの緊張感そのままで、美人のモデルと画家の妻の嫉妬、テーマの遣り取りも充分通じる演劇性があって引き込まれる。通常の狂言の公演と言うと、太郎冠者、次郎冠者のくだらない筋書き、それをみせるのが芸の力と言いたいのだろうが、また西欧にも中世からあるファブリオーと呼ばれる民話に通じるといわれるが、少しバカバカしく時間の勿体ないのが常である。通例の古典的な筋の物の他に、30ばかり和泉流に伝わる門外不出の演目の一つと「巨勢の金岡」を説明されたが、こんな現代人にも訴えるストーリー展開のものなら、西欧人でももっと見たがるだろうにと思ったのだった。
 同じ日本文化会館で、小林賢太郎の「ポツネン氏の奇妙で平凡な日々」と言う、マジックも取り入れたコミック一人芝居を3年ぶりに見たが、チャップリンの芸に通じ、また狂言「巨勢の金岡」を思い出した。みんな通じるものを持って居る。

2017年7月10日 赤木 曠児郎

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