「ひとびとが憧れる街」

 日本のNHKが、8Kの技術で撮影したルーブル美術館紹介の、1時間ドキュメントが完成して、ルーブル美術館のホールで発表紹介される。8Kとは粒子の目の細かさで、普通のテレビが2Kくらい、HDどころか、8までなると人間の目で見ているより細かい粒子なのだそうで、現在のIT写真の極致みたいなものらしい。直接大画面で側でみても、点々にならないで全然綺麗なのである。その技術で拡大されて見るのだから平生気が付かないものまで、見えてくる。世の中の進歩に驚かされて、興味津々だった。技術国日本、頑張れである。
 歌手の加藤登紀子さんの、歌手生活50周年を記念したリサイタルが一夜開かれた。1907年に建てられたパリ中心部にある、有名なコンサートホール、伝統のあるクラシック音楽の大ホールで、ここでの記念公演は歌手にとって夢のような場所だろう。以前2度彼女はパリ公演を開いているが、今回は20年ぶり、全員無料招待の大張り切りであった。ただし同じ夜同じ時間に、明年5月のフランス大統領選挙に向けて、ドゴール派系列の右派の候補に名乗りを上げた7名の第二回目公開討論があり、280万台のTV,400万人の聴取者だったと言われ、フランス人にとっては大問題。ホール700座席の3階までの会場が、ほとんど日本人客で満席なのは致し方ない。とにかく平常500人位で大成功と言はれるこのクラシック音楽の聖堂が、割れんばかりの盛会であった。自作の曲、好きな曲の第一部、エディット・ピアフの曲を集めた第二部の構成の二時間だったが、お終いにアンコールで「百万本のバラ」と「知床岬」の2曲を歌って、やはり持ち歌は強いと聞かされる方も妙な満足感である。芸に関するひとは、パリで一度は発表してみたいと、夢見る人が多くよく日本では相談を受ける、幸せな街である。

2016年11月11日 赤木 曠児郎

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