「2月のパリジェンヌ」

 一月はあっという間に過ぎ、二月である。一月一日は元旦だが、二月二日も大切である。カトリック教では「聖母お浄(きよ)めの日」、キリストが生まれて40日目、母親の不浄の期間が終わって、キリストを初めて神殿に捧げた祝日となっている。日本なら誕生児のお宮参りといった方が判りいいだろう。フランスではこの日には「クレープ」を食べて祝う風習となっていて、正月にお餅のようなもので、盛り場やシャンゼリゼの大通りに、クレープ焼き屋の屋台が現れたりする。地方ではクレープは立派な主食で、そば粉を溶いて薄く円形に焼き、中にハムやチーズを入れて巻いて食事にするし、メリケン粉で焼いてバター、砂糖、ジャムなど塗って巻き、デザートやおやつにもする。昔日本にあった一銭洋食のようなものと思えば良い。問題はここからで、右手にナポレオン金貨を握り、片面焼けたところで左手でフライパンを振り上げて、くるりと円形のクレープが上手くひっくり返ると、その年1年お金に不自由しないと信じられている。また食べながら「聖母さま・・・・」とお呪(まじな)いをとなえると、その一年中幸せと成功がくるとかの言い伝えもある。ワインのブルゴーニュ地方の風習が、フランス全土にひろまったと言われる。この日マリア様に供えた蝋燭の残りを一年保存してお守りにする地方、背の低い娘っ子たちが、脚が長く伸びるお呪いを、この日の朝起き掛けに唱えると願いが叶うと信じられているところもあるとかも聞かされて、二月二日は大変なのである。

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