岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2014年9月10日

「200年つづいたフランスの老舗」

 9月、長い夏休みが終わって、濃紺や濃いグレーの職場に通う背広姿のひとたちが一斉にフレッシュである。ビジネス地区が引き締まって、来年のバカンスのために、サー、稼ぎ始めるぞという気概が見える。まだ夏をひきずるだらだらした衣装の旅行者、失業者、定年の年金生活者、学生街、移民外国人、社会の階層、地区毎の特徴のハッキリしているのもパリである。
 THIERCELIN(ティエルスラン)、フランスで200年続いている企業が、パリの外国人特派員協会を招いて記者会見を開くと言うので、休み明け一番、行ってみる。あまり聞いたことのない名前なので、何の業種かなと200年に釣られたのである。香辛料商で1809年、東のロレーヌ地方からパリ圏に出てきて始まった店で、主要の商品はサフラン一筋、まだ若いダビッド・ティエルスラン氏で7代目だそうである。サフランは、菖蒲(アヤメ)科で紫の花、球根で育つクロッカスの名前でも知られる。花の真ん中からのびる3本の赤い蕊(しべ)だけを集めたもので、ライスカレーやブイヤベーズの黄色と香り、西洋の料理には古来欠かせない薬草である。カレー粉の黄色などは鬱金(ウコン・生姜の一種)からだが、ライスの方にサフランで香り、色つけられると超高級となる。10月から11月にかけて年間2か月だけ収穫され、手仕事で集め、価格は重量で金の値段と相当するという高価なもので、グラム単位のビジネス。現在はイランでしか採れず、一般の料理店などでは3割が本物で、7割はにせもの代用品が使われているという。この店はその本物のサフランを扱い、その他いろいろな特殊香辛料を注文で、一流シェフや、メーカーからの特殊オーダーの依頼に応じてきた専門問屋で、一般とは縁のない店であった。サフランを世界中から直接仕入れで集めて、自社アトリエで加工して販売、信用と定評をもって続いてきた。

page1/3