岡山市出身でフランスのパリを拠点に活躍する画家、赤木曠児郎さんから月に1回程度「パリ通信」を送っていただいています。

2010年8月5日

「休みの過ごし方」

 街路樹の木陰の多いパリ。田舎や旅に出かけても、近年は暑かったり、寒かったり気候は一定しないし、人込みや、車のラッシュに揉まれることもないわけで、昼間からボンヤリと、カッフェの出すテラスで、昼飯定食とワインで夕暮れまで、通行人を眺めながら時を過ごすのも、バカンスならではである。人口は普段の半分、商店も半分はシャッター降ろして夏休み。平素よりゆったりのパリは、やっぱり素晴らしい。食事とは、前菜からデザートまで2時間が普通だし、ゆっくり会話を楽しみながら満腹になれば、4時間が標準である。昼間からこんな落ち着いた時を持てるのも、バカンスの特権で、あちこちカッフェが舗道にはみ出して、日本にも涼みの縁台というのがあった。セーヌ河畔には、海岸から何トンもの砂を運んで、市が人口ビーチを作り、夏のパリジャンに解放している。
  以前の保守系市長が続いていたころの首都パリは、規制を強め、通路には物を出さないよう、道路は広くし渋滞を少なく、車を早く走り抜けさせるようにと、取締りばかりだったが、商店は活気を失い、シャッターを降ろし、寂れてしまった。社会党の現市長になって、町は人間の暮らす所と考えたのかどうか、保守主義政治家が、細く細くと心掛けて狭めていた舗道を、ゆったりと倍に拡げ、車道は二車線を一車線に狭めて、逆に車は市の入り口まで、市内の移動は、バス、地下鉄、貸し出し自転車を便利にした。レストランやカッフェも、割と楽に許可が得られるようで、舗道にドンドン張り出してテーブルや椅子を並べる。現在では、この舗道テラスの無い店には、客は入らない。店の奥はガラガラだけれど、テラスは込み合って満席が光景である。真冬でも、少しでも陽が照れば紫外線が大好き、外のテラスに座りたがるのがパリジャンである。商店も外に競って並べ、パリが村、昔の市(いち)のようになって、人込みと、活気を取り戻しているのを、誰もが認める。世界中から集まる旅行者だって、冷たくビルの町並みが揃ったのを、ただ歩いても仕方ないので、人間がゴチャゴチャ雑多に沢山いる方が、外国らしい。

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