証券取引所通り
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「デパートの寅さん」

 モータリゼーションの時代で、車に便利なショッピングモールの発達、いろいろな催しが増え、ひとびとの趣向が変わったからだと言われるが、つい最近までデパートは、憧れの殿堂だった。両親に連れられてデパートに行くなんて、子供心にワクワクとしたご褒美だった。
 デパートの元祖は、1852年に誕生した、我が家からも遠くない、パリのボンマルシェ百貨店ということになっている。発明したのはアメリカのNYで、もう四年だけ古い、1848年と記録されているが、ボンマルシェ百貨店の数々の商法が画期的で、後世にまで影響を与えたのである。最大は、現金正札販売で、適切な利潤で、正価を確立したこと。それまでは掛売りで、何時支払われるかもわからないから、商店側も3倍も、4倍も掛け値、値段の交渉が常識、夜の銀座のバーの料金のようなものである。
 当時の貴族階級や、上流社会など、品物を届けさせ、何時までも預かって、難癖つけて返品や、値段交渉が普通だったから、文句の付かないように完璧の高級品が発達したし、高くしておかなくては、成り立たなかったのである。そんな習慣のところに、正価の百貨店が登場したから、庶民にとっても光明だったのである。百貨店のことを、フランス語ではグランマガザン、大商店という。百貨店は社会の値段の基準であり、社会のお手本で、ここの正札を値切るなんて考えられもできないことだった。ところが今は、株主割引、社員割引、ポイント割引、何と色々なカードがあるのだろう。その上「外商」と言うのも知られていて、沢山買うから、欲しくないのに、成績合わせに無理やり買ってもらうから、法外な割引というのも横行している。 

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