アンリ・マルタン駅
 

「年末」

 しかしクリスマスと年末には年に一回、感謝の意をしめす贈り物交換の習慣もあって、特に個人的にその年内に特別な世話になった人には、忘れていないよと贈ることもある。
 フランスの商店にとっては、半値に値下げしてでも、シーズン仕入れ全ストックの処分に、特売の年二回の週間を除けば、年末の12月は、クリスマスの贈り物の交換で、唯一の物が動く季節なのである。1年間の売上げを、この月で稼ぐぐらいの意気込みがあるので、町中がイルミネーションで、この時期にと飾られる。
 下心で年中相手の気を引こうと贈り物する恋人たちは別として、根本の視点の違いは、贈り物は対等な交換であり、何故くれるのかと理由を尋ね、受け取ればお返しが強要されることになる。お互いに理由もないのに、関係を作りださないのが大切。
 下役が上役に物を贈ったりしては、あなたも私も対等の意味になって逆に失礼になる。常に上位の持てるものが報謝、恵んで与え、自分の優位を示し、友愛の精神となる。これには宗教による教えや宣伝が入り交じる。ここのところの骨子(こつ)が、大違いなのだ。一方日本では物を押しつけて渡して、礼儀を尽くしたことになる国の習慣なのだから、この違いは始末に悪い。
 どちらが正しく、どちらが良いというのもでもなく、考え方の違いなのだから、何時でも困るのである。

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