パリ・グラン・パレの屋根
 

「枯れ葉の中で」

 美術品は需要と市場があるから人気なのだろう。秋になると、色々な催しが目白押しである。チュイルリー公園に天幕を張って、9月20日から9日間開かれていたのは「第7回秋のパビリヨン」展。50社のパリを中心にフランスの第一線画商と美術品商、それに150社ばかりニューヨーク、ブラッセル、ロンドン、チューリッヒ、フローレンス、オランダなどからも集まって、自慢の所蔵品を並べて商っている。同業組合の歴史の深いヨーロッパでは、同業で集まって協同でイベントを盛り上げるのが好まれ、盛んなのである。日本では富士山みたいに、1社だけで力のあるところを見せるのが好まれる傾向が強いが、喧嘩別れしたり何だかだと言いながら、とにかく同業の同格で集まりたがるのがこちらである。
 この会場、美術品にしても、骨董品にしても、現代のパリ美術市場の第一級品だけが集まっていて、日本系では「ためなが画廊」1社だけ参加しているが、美術館より飽きない。秋に国立グランパレ美術館で大々的なナビ派の作家ヴィヤール展が開かれ、生家が豊かで生前1点も作品を売らなかったヴィヤールの作品が、珍しくどこの画廊にも、表に早速並んでいるし、ニューヨークからの画商の1社は漫画派佐々木隆の作品を並べている。シャガールやモネの睡蓮くらいは当たり前で、誰も驚かないが、何が商品なのか興味深い。ここも9日間で10ユーロ(約1500円)の入場料を払って、4万人の入場者を見込んでいる。まだ他にも、オートイユの競馬場のパビヨンで恒例の「パリ骨董商展」も同時期盛大に開かれているし、カルーセル・デュ・ルーブル会場でも、80の画商の集まる現代美術展も同時期に開かれていた。秋から来年バカンスまでは「パリの中国年」で、中国文化の催しが目白押しに集まり、10月半ばには1974年設立、もう30周年を迎える、169社の前衛現代美術の画廊が世界から集まる「FIAC見本市」で6日間賑わう。
 美術館市場は、やはり本場なのである。

2003年9月30日 赤木 曠児郎  
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