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「買いたいものがあれば何でも買える」中国共産党・習近平指導部の下で発展する国内経済と、裏に潜む人権問題【報道特集】

開幕まであと1か月を切った、北京冬季オリンピック・パラリンピック。舞台となる中国は2030年代には名目GDPでアメリカを抜き、世界第1位になると見られている一方、「外交的ボイコット」に始まる西側諸国との対立も深まっている。
私たちは、創立100周年を迎えた中国共産党・習近平指導部の下で発展する国内経済や、発展の裏で深刻化する人権問題を取材。今後、日本は中国にどう向き合うべきなのか? ■「買いたいものがあれば何でも買える」 格差是正目指す「共同富裕」の現状とは 2021年7月、創立100年を迎えた中国共産党。習近平指導部は、この翌月、「共同富裕」というスローガンを大々的に打ち出した。 その狙いは「格差是正」。経済発展とともに広がる貧富の差を是正し、すべての人が豊かになることを目指すとしている。 それを物語るように、12月25日のクリスマスには、北京市内の高級ブランド店が集うショッピングモールに大勢の人が詰めかけていた。 買い物客の女性:きょうは6万元(日本円で約100万円)以上、使いました。年末なので自分へのご褒美ですよ。生活の質が上がりましたね、昔は高級品を買おうとは思いませんでしたから。 記者:中国はどんどん良くなっていると思いますか? 買い物客の女性:それは間違いないです。以前よりも良くなっています。これからどんどん良くなっていきますよ。間違いないですね。 裕福な生活を送る人も増えた。北京で妻と2匹のイヌと暮らす岳利宏さんに、その暮らしぶりを見せてもらった。住まいは3LDKのマンションで、日本の畳を敷いた掘りごたつが作られた部屋は岳さん夫妻の趣味の多彩さがうかがえる。 記者:なぜ(北京から離れた南部の)広西チワン族自治区の地図があるんですか? 岳利宏さん:ここに別荘を買ったからですよ。正月や休みのときに車で家族を連れて遊びに行くんです。今回の五輪選手村で使われるマンションも購入予約済みです。 岳さんは新聞社や国営通信社などメディア畑を歩んできた。5年前には転職し農業を始めた。現在の生活について尋ねると…。 岳利宏さん:問題ないです。習主席が『豊かな自然は金銀同様の価値がある』というように農業でも儲けることができるんです。地方も発展し、去年には政府が掲げた “小康(ややゆとりのある)社会 ”を実現しました。これが今の中国なんです。 この日は親戚や知人が集まり、食事会を開いた。そこに集まった人たちからも、政府の手腕を評価する声が相次いだ。 「今は買いたいものがあれば、何でも買えます。国が裕福になり強くなったから、それだけです。私たちは本当に満足しています。指導者は素晴らしいです」「政権への信頼は非常に高いですよ」「これまでの指導者もそれぞれ人民が豊かでより良い生活を送る為に努力してきました。中でも最も急速な発展を成し遂げた指導者が“習おじさん”なんです」 目覚ましい発展を果たした習近平氏を、尊敬や親しみを込めて「習おじさん」と呼ぶ国民もいる。日本から見るとあたかも「言わされている」ようにも映るが、記者は「政府のプロパガンダの成功もあると思うが生活が豊かになったことに満足していることと、世界の中心になっていくことへの期待感がそうさせているのではないか」と分析する。 都市部の豊かさの一方で、中国の所得格差は農村部との間で広がっている。それでも「共同富裕」政策への期待からか、北京に出稼ぎに来る人たちに話を聞くと、その表情に悲壮感は見えない。 出稼ぎに来た男性:(「共同富裕」政策は)もうちょっとかな、まだ足りないです。こんなに多くの人が職を求めているんですから。 記者:アメリカについてはどう思いますか? 出稼ぎに来た男性:アメリカ…今の私たちの国に比べたら、少し劣ってますね。昔はもちろんアメリカは裕福でした。でも、今は中国に負けてるでしょうね。 別の出稼ぎに来ている男性も、「仕事がやりやすくなり、暮らしは以前よりもだいぶ良くなった」と話す。経済面では支持する声も多い、習近平体制。だが、その裏では深刻化している問題がある。 ■深刻化する人権問題 「国民に広く参政権を」言葉と乖離する実態 2015年に「国の法制度には人権保障の面で大きな欠陥がある」とするメッセージを発信した中国の人権派弁護士、王全璋さん(45)。公安当局に他の弁護士ら300人と共に拘束され、「国家政権転覆」の罪で、5年近く刑務所に収容されていた。現在は出所しているが、出所して2年近くたった今も、一家は当局の監視下にある。 去年12月、「世界人権デー」の前日、王さんが長男を学校に送ろうとしたところ、当局とみられる見知らぬ女性たちが自宅の前に立ちはだかった。子どもを学校に送ろうとする王さんに対し、「子どもを預かる」と話し、外に出さないようにする女性。この日、王さんたちが拘束されることはなかったが、外出は禁止となった。 また、去年11月の地方議会の選挙に、妻の李さんら14人が中国共産党の承認を得ずに立候補しようとしたところ、演説予定地で突然多くの清掃作業員が路上を掃き始め、埃まみれに…。結局退散せざるを得なくなった。他にも度重なる嫌がらせや圧力を受け、14人は最終的に立候補を断念。「国民に広く参政権を」という習近平・国家主席の言葉とは、あまりにもかけ離れた実態が浮き彫りになった。 王全璋弁護士:私たちは多くの問題に直面しており、生活をより良くするために、少しずつ変えていくしかないのです。 王さん一家は、先の見えない状況が続いている。 ■「人を知り、人を思う世界へ」今後の日中関係の向かうべき先は 1972年の日中国交正常化から今年で50年を迎える。しかし、両国で毎年行われている共同世論調査の結果では、中国の印象を「良くない」と答えた日本人は9割を超え、中国側の対日感情も再び悪化しはじめている。中国とどう向き合っていくのか。両国を深く知る人物に話を聞いた。 来日して30年以上になる作家で、大学教授の毛丹青氏。毛氏が懸念しているのは、日本人が等身大の中国をあまり知ろうとしないことだ。 毛丹青 神戸国際大学教授:今の日本の本屋さんにいくと、だいたい反中、中国嫌いという本がいっぱい平積みしてあるんだけど、じゃあ一方で、中国のその暮らしぶりやライフスタイルを紹介する、興味を持つような本があるのかっていうと、中国ほどではない。 実はいま、中国の書店では「日本を深く知りたい」というニーズの高まりから、日本の絵本や日本人のエッセイがよく売れているという。 毛丹青 教授:普通の中国人が日本のことをそれだけ知っていて、自分たちの生活を豊かにするために日本人の知恵を拝借したいというような勢いがあったのに対して、じゃあ日本はどうかっていうことを逆に考えた場合、相手の国の人たちの暮らしぶり・ライフスタイルに興味あるかっていうと、ほとんどないですね。これ中国に限った話ではないんですよ。知れば知るほど、実は生活というか、想像力が豊かになるのに、そこまで一歩踏み込まないっていうのは大きな問題です。 日本で中国の脅威や対中強硬論を強調する声が高まっている現状について、毛氏はこのように分析する。 毛丹青 教授:すべては政治がらみの話が多すぎる。普通の庶民のね、暮らしぶりはどうだったのかっていうのをほとんど伝わってこない。10年20年後を考えてみてください。大人たちがお互いに、あなたの国のことをよく知ってる人間がいた。しかし、相手が自分のことをあんまり知らない人がいた。じゃどうなるかっていうことになるんですね、同じ次元になれなかったっていうこと、これが知の落差だと思うんですよね。 記者:文化みたいなものが、政治など高いハードルを越えることができると考えますか? 毛丹青 教授:僕は思いますよ。人は人を知り、それから人は人を想うような、そのような世界が日中関係のこれからの発展には大きなヒントじゃないでしょうかね。 (報道特集1月8日放送より抜粋・編集)※情報提供は番組ホームぺージまで(15日9:00)

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