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「感染者の隔離期間の大幅な見直しを」感染急拡大する沖縄の医師からの提言【報道特集】

新型コロナウイルスの感染急拡大が続く沖縄。医療従事者や公共交通機関の職員らが次々と感染するなどして働き手が不足するという問題が、沖縄県でも、現実味を帯びてきています。
沖縄県の感染症対策で陣頭指揮を執り、国のコロナ対策のアドバイザーを務める沖縄県立中部病院感染症内科の高山義浩医師は、こうした問題に対処するため、「感染者や濃厚接触者の隔離期間の大幅な見直しが必要だ」と訴えました。 報道特集の皆川キャスターが、沖縄の現状から、第6波対応の処方箋まで、じっくりと聞きました。(2022年1月7日取材) ■「“基地から漏れ出たこと”と“県内で拡大してきたこと”は分けて考える必要がある」 ――感染に歯止めがかかっていない状況で、やはりきっかけのひとつというのが在日米軍と言えるんでしょうか? 今回のオミクロン株の流行は、基地からの波及であることは間違いないと思います。本土でオミクロン株がまだ流行していない時から沖縄で広がり始めましたし、当初、基地従業員で感染者が多発したというところもありますので、“基地から漏れ出た”ということだと思います。ただその後、“県内で拡大してきたことまで米軍のせいというわけではない”。そこは分けて考える必要があると思います。 ――その最初というのは、時期としてはいつ頃なんでしょうか? 去年12月の中旬になります。その頃にもう既に米軍での大きな流行が始まっておりましたので、それが基地従業員あるいは友人関係とか、そういったところをたどって、オミクロン株が沖縄県内に広がってきたという経緯になります。 ■「正月と成人式」「離島」「検査の無料化」という沖縄ならではの拡大要因 ――いまの感染拡大の要因としては他に何が挙げられますか? この年末年始は、多くの人や本土から帰省者も含めて、やっぱり集まる機会が多かったというふうに思います。この2年間のコロナとの戦いの中で、久々に小康期が長く続きましたよね。そのタイミングでお正月を迎えたということもありますので、やっぱり親族同士で、せっかくだから今集まろうということで集まるケースも多かったと思います。またもうひとつ、沖縄県は離島がありまして、里帰りがなかなかしにくい県ですよね。そういうこともあって、里帰りがある正月に合わせて成人式を持つ町村も少なくありません。こうした親族交流、同級生の集まりが感染を広げたという面はあります。もうひとつ申し上げると、感染が拡大してきているということで、沖縄県では検査を無料化しました。そうすると、これまで検査を受けなかったような若い人たちが検査場を訪れるようになったということもあります。また職場とかでも「無料になったんだから検査を受けて来いよ」ということも言いやすくなりましたよね。若い人たちが検査を受けたということで、今まで以上に感染者が発見されやすくなったということもあります。 ――“検査対象が広くなったから”ということもあるんですね。話を米軍の方に戻しますと、先生は米軍の病院の担当医師と日頃からコミュニケーションをとられていて、でもその中でも米軍は情報開示してない、ということですよね。先生はどういったコミュニケーションを12月頃からとっているのですか? 私は米軍病院の担当者ではなく、公衆衛生の担当者とコミュニケーションをとっております。沖縄県内の状況についても先方も知りたいということもありますし、私も米軍での流行状況について、向こうもなかなか情報開示できる範囲は限られてると思いますけれども、ただ一部非公式のコミュニケーションも含めて、話をするということが出来てはいました。 ■“インフルエンザに近い”症状 高齢者の重症多発も想定に ――去年の年末に「沖縄は1月中旬までには県で1日1000人を超えるのではないか」という分析をされていましたよね。それはどういった科学的根拠に基づいておっしゃっていたのでしょうか? 感染力がオミクロン株になって強まっているということは、先行している諸外国のデータからも明らかでした。実際多くの国々でオミクロン株の流行とともに過去最大規模に達しています。もうひとつ、ワクチンの感染予防効果が半年程度で減弱することも明らかになってきていました。特に沖縄県もそうですし、日本全体でもそうだと思うんですけども、春から夏にかけて接種を受けた人が多いので、それから半年以上が経過してるこの冬は大きな流行になる要因があったと思います。 ――ということは、そろそろ私達もワクチンを3回目打った方がいい、ということですね? 少なくともですね、高齢者などハイリスクな方々の重症化を減らすためにも「3回目の接種を高齢者の方々には打って下さい」ということは呼びかけております。また感染拡大を抑えていくためにも、できれば若い方々についても協力をいただければというふうに思っています。 ――オミクロン株は重症化しにくいとも言われていますが、“ワクチンを打つから重症化しにくい”のか、それとも“元々のオミクロン株というのがそういう特性を持っている”のか。どちらなんでしょうか。 おっしゃるように、海外からはオミクロン株の病原性が低いのではないかというデータが少しずつ出始めていますよね。ただ、やはり欧米については、高齢者への3回目接種が進んでいます。一方で日本は3回目接種っておそらく1%にも満たない状態じゃないかと思いますから、欧米で軽症が多いのはワクチンの効果かもしれませんが、日本はそこには達してないということは理解しておく必要があると思います。沖縄のこともお話しすると、これまでオミクロン株の感染者は私の病院でも診ておりますけれども、実際のところ“インフルエンザに近い”という印象があります。これは臨床的な実感です。ただそれは現時点で感染の主体が20代を中心とした若者だからでもあります。今後、高齢者へと感染が広がっていった場合には、重症者が多発することは想定しておかなければいけないと思うんですね。 ――もし高齢者がかかってしまったら、より重症化する可能性がまだあるということですよね。 そうですね。高齢者の方々についての感染がまだ十分確認されていない。若者中心の流行の段階で、高齢者も含めて大丈夫だと早合点しないということが大事だと思います。 ■沖縄では「ほとんどの人が何らかの症状訴える」 ――「インフルエンザに似ている」とおっしゃってましたけれども、具体的には熱なんですか?それとも喉の痛み、どういった症状が出るんでしょう? まさに今おっしゃる通りで、高い熱がやっぱり出ますね。普通の風邪だと、熱も37℃台後半ぐらいで、そんなに高熱が出るということはないんですけれども、やはりオミクロン株においてもですね、インフルエンザ同様に38℃以上の結構高い熱が出て、きつい思いをされる方はやっぱりいらっしゃいます。だいたい沖縄県での経験で7割から8割ぐらいは発熱をされているという印象があります。一方、咳が出る方が6割ぐらい、全身倦怠感、そうした症状がやっぱり何らか出ていますね。海外の情報だと、無症候の人が多いというふうに言われてますが、沖縄県においては、ほとんどの方が何らかの症状を訴えておられます。 ――沖縄では若い人がかかっている割合が一番多いんじゃないかなと思いますが、それはワクチンの接種率とも関係しているのでしょうか? 多少は影響しているとは思いますけれども、まずはやはり連休が続きました、クリスマスもありました、そうした期間に、若い世代がアクティブに活動して感染していったというところはあるんじゃないかなと思いますね。 ■ベッド数に余力はあるが…沖縄では、医療従事者が足りない状況に… ――沖縄のいまの医療の状況はどうでしょうか。具体的に教えていただけますか? 実はかなり厳しい状態に陥ってます。病床自体は発生する患者さんに対してある程度確保できてますし、まだベッドの面においては余力があるんです。ただ一方で、医療従事者の感染が次々に見つかっていまして。いま重点医療機関、コロナの診療している医療機関で200人以上の医師や看護師が感染をしたり、あるいは濃厚接触者ということで就業制限がかかったりということで出勤できなくなってきています。このため「病床があってもそこで診療する医療従事者がいない」という状況が少しずつ広がっていまして、既に私の病院もそうなんですけれども、一部の救急受診を制限させていただくなど、そういった形で医療従事者をよりコロナの部分に回していくということを行わないとですね、医療が維持できなくなってきております。 ――ベッドとかはまだある、重症化もあまりしないですから、重症化用の酸素吸入する機械とかではなくて。本当にお医者さん、看護師さんたちがどんどんいなくなってしまうという状況になっている。 おっしゃる通りです。ベッドは、まだある程度余裕がある。とはいえですね、もう少し詳しくお話をすると、1月という、1年間の中でもですね体調不良を起こす人が一番多い季節です。具体的には、脳梗塞、心筋梗塞、肺炎とか、様々な体調不良を高齢者の方が訴えやすい寒い季節です。この季節は例年一番ベッドが足りないんですね。特に地方においては、だいたい1月になると、病床が満床で救急外来を回すのは厳しいというのが毎年のようにニュースになっていった、そういう季節なんです。そこに今年はコロナが乗っかってきたということで、例年以上にかなり厳しい状態になっている。ここはご理解いただく必要があると思います。確かに第5波の時、夏、大きな流行がありましたが、夏はそんなに肺炎の患者さんとか体調不良の患者さんが出にくい季節なんですね。その時と同じ規模で(感染の波が)来たとしても私達はちょっと耐えられない、というところはあります。 ――いまちょうどタイミングが重なってしまっている。この寒い時期にかけてということですか。 もう一点申し上げておきたいんですけれども、ご存知のように、この数日で急速に患者数が増加してきています。600人、900人、そして1月7日で1400人という形で、沖縄で急速に感染者数が増えてきている。これだけ急速に増えてくると、そもそも「コロナ用のベッドを準備しています」と言っても、そのベッドは空床で待っていたわけではありません。他の患者さんが寝ていて、治療を受けておられて、コロナが流行したら少しずつ空けていきましょうねということで約束して確保している病床ばかりなんです。ですから、これだけ急速に感染が広がると、まだベッドに患者さんが寝ているので、その患者さんを移すことができません。ですからあまりにも速度が速いということも医療をひっ迫させている要因となっています。 ■「いま風邪をひいたらコロナである可能性は極めて高い」 ――沖縄は“まん延防止措置”を1月31日まで適用すると決めた。効果は期待できますか? まず1月末までというふうに、とりあえず決まってますけれども、可能であればそれはもっと短く最短にしていく努力をするべきだと思います。やっぱり社会の痛みを伴うような介入というのは最小限であるべきですよね。ダラダラと長期化すると、協力できなくなる人たちが増えてきますし、介入の効果も減弱していきます。ですから最初が肝心です。いましっかりと感染リスクのあるような行動を控えていただいて流行を抑えていくことができれば、1月末ではなく、もっと早くですね、社会介入を解除していくことも可能ではないかなというふうに思っています。 ――東京もどんどん増えてきてはいるんですけれども、手洗い・うがい・手指消毒などの感染予防対策で基本的なことを皆さんしてると思うんですけれども、他にこれに気をつけなきゃいけない、心がけた方がいいということはありますか? いえ、もうこの2年間のコロナとの戦いの中で、だいたいその感染予防についての考え方は整理がついてきていると思います。特殊なことは考えすぎない方がいいです。つまり、オミクロン株であっても基本的な感染対策が有効なので、人が集まる場所ではマスクを着用しましょう、公共のものに触れた時にはこまめにアルコールで手を消毒していきましょう、そして一緒に食事をするのは同居する家族とか、親しいパートナーとかそうした方々にとどめてください。そして何より大事なのは、発熱などの症状がある時は、仕事や学校を休んで外出を自粛していただくということです。 ――発熱というのはだいたいどの程度でしょうか。37.5℃や38℃、人によってかなり捉え方が違うと思います。 おっしゃる通りです。風邪をひいたらというふうに理解してください。そこは個人差があります。特にいまはですね、沖縄も東京もそうだと思いますけれども、急速に感染が広がり始めている状況ですから、“いま風邪をひいたらコロナである可能性は極めて高い”です。そうした状況では、37.4℃であったとしても、喉が痛くて、少し体のだるさもあるということであれば、熱も軽いし大丈夫だろうと思うのではなく、やっぱり拡げないためにも、学校や仕事を休んでいただければというふうに思います。 ――いつもとちょっと体調が違うな、と思ったら迷わず休んだ方がいいし、あんまり人と会わない方がいいということですよね。 そして、例えばその前にですね、おじいさんとかおばあさん、高齢者との接触があったということがあれば、特にそういう場合ですね、早めに検査を受けて、そして感染をさせたかもしれないという人に伝えていくことも大事だと思います。 ■「若者たちがやりたいことを実現できるように、一緒に考えていくことが重要」 ――先生ご自身が新成人に向けて何かメッセージを送るとしたら、どういったものですか? もちろん成人式に限らず、成人して自分で自分を律して生きていく、大事なスタートラインに立たれたというふうに思います。そして自分だけの問題ではなく、社会の一員として、周囲に感染を拡げないことであるとか、そうしたところもですね、主体的に自分の行動について考えていただく大事な機会だろうというふうに思います。成人式のことでいうと、もちろん延期していただくのが感染を抑え込みたい(という医師の)立場からすると一番だと思うんですけれども、ただ、今から行事の延期を決めても予定している飛行機やホテルの予約が取れていて、あるいは多くの同級生が沖縄に帰ってくるということもあるので、実際のところは同窓会とか開かれると思うんですよね。ですから、成人式の行事はやりつつも、無料で抗原検査を受けられる場を設けることの方が、感染者が増加する宴会での感染を防ぐというところには繋がるというふうに思っています。つまり、成人式の前でも後からでもいいので、ぜひ検査を受けていただいて。抗原検査が簡易にできるキットがありますよね。検査をして陽性だったら、宴会には行かないので、それだけでもかなりの感染予防になります。そういう提案を沖縄県でも新成人の方々にしてはどうかと、県から市町村に伝えております。成人式については、一方的に中止を伝えるっていうやり方は、せっかく成人した大人たちに対しては、あまり良い態度ではないと私は思っています。当事者である新成人の方々に、やるかやらないかということを大人として決断していただく。それが大事だと思います。成人式に限らず、これからそういうことを自分で決断していくスタートラインに立たれたわけですから、そこは一緒に考えるということが必要だと思います。成人式は中止すべきということではありません。先ほど話したように、「じゃあ安全にやる方法は何だろうか」ということについて、私たち感染症の専門家は提案することができます。抗原検査キットを使っていったらどうか、とかそういうことですよね。とにかく若者たちがやりたいことを実現できるように、一緒に考えていくということがこれからは重要ですし、そうした支援を私たち専門家もしていきたいと思っています。 ――(成人式を)やめた方がいいんじゃないか、もうやめるべきなんじゃないかではなく、“どういう状況だったらできるよね”ということを考え続けていくということですね。 そうですね。まず本人たちがどうしたいかということを確認する、そしてやりたいことがあるんだったらそれを科学的な立場から、それはさすがに難しいですよとか、それを実現するためにはどういう方法があるか一緒に考えてみましょう。そういうコミュニケーションが結局のところ感染対策への協力が得られていくということに繋がるだろうと思いますね。先ほど私も申し上げたように、このオミクロン株の病原性はやはり変わってきているし、インフルエンザに近づいてきているとは思います。ただ、若者たち中心の流行である現状をもって、あまり早まった判断をしてしまうと、このまま大流行のまま、「大丈夫だよ」と言って高齢者に(感染を)移行させてしまうと、大きな被害になりかねません。また、いまアメリカで大流行していることはもう既に大きなニュースになっていますが、アメリカだと1日に2000人前後の死亡者が出続けています。ですから、病原性が低下していたとしても流行は制御する必要がありますし、高齢者を特に守っていくというような心がけ、これは引き続き求められるというふうに思います。ただ社会全体に対する活動制限というのは最小限であるべきだし、最短であるべきだというふうに私も思います。 ■オミクロン株に合った隔離基準「改めて作る必要がある」 ――感染拡大で働く人、とりわけエッセンシャルワーカーが減るという問題をどうみますか? 現時点において、濃厚接触者の方は14日間自宅待機で、就労制限がかかってしまいます。ところが、濃厚接触者の方々について、例えば「7日後にPCR検査をして陰性であれば働いていいですよ」とか、あとは「毎日抗原検査で陰性を確認しながら働いていいですよ」とか、こうしたものを技術と組み合わせることによって短縮できる可能性があります。それだけでも働く人たちを確保しやすくなります。あるいは感染者の方々、(隔離期間は)今は発症から10日ということになってますけれども、この基準というのはアルファ株やデルタ株が出る前、従来株の時に決まったものです。つまり、ワクチン接種が進んで、また潜伏期間もどうやらオミクロン株は短くなったということも言われていますので。やはりこのオミクロン株に合った隔離、解除基準というものを改めて作り直していく必要もあると思います。もしかしたら10日ではなく7日で済むかもしれない。そうしたところを、いま社会に協力していただく以上は、医療現場と行政とが協力して、どういう隔離基準というのが適切なのか、なるべく早く社会に復帰していただくための科学的根拠は何なのかということを作っていく責任もあると思っています。(11日09:46)

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