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「医療体制が崩壊し始めている」新型コロナ急拡大・沖縄の医師が語るひっ迫の医療現場【news23】

連日多数の新規感染者が確認されるなど、新型コロナの感染拡大に歯止めがかからない沖縄県。「医療体制が崩壊し始めている」。現地で救急医療に携わる医師の話を聞くと、ひっ迫する沖縄の医療現場の実情が見えてきました。
沖縄県豊見城市にある、友愛医療センター救急科の山内素直医長にnews23が取材しました(取材日:1月10日)。 ■「ひっ迫、もしくは崩壊し始めている状況」 ーー沖縄の医療の状況は。 コロナの医療に関して言うと、幸いにも重症のコロナ患者さんは出ていないようで、比較的病床にも余裕がある状況だと思います。ただ、コロナ患者さん以外に対しての医療ですね、救急医療とか一般診療にかなり影響がおよんでいて、ひっ迫している状況です。その一番の理由としてオミクロン株と思われる新型コロナの第6波で陽性者や濃厚接触になってしまう医療スタッフが爆発的に増えてしまったことが挙げられます。そのために病院の機能を維持できなくなり、医療体制がひっ迫、もしくは崩壊し始めている状況です。 ーーすぐにオペ室に運ばれるような患者さんでも受け入れてもらえない状況なのでしょうか。 そういう状況も実際にはありました。先週は連日、北部の方からヘリコプターで1分1秒を争うような脳出血の患者さんも運ばれてきたのですね。普段であれば、一刻を争う病状なのでできるだけ早く、できるだけ近くの病院に搬送されるべきですが、受け入れ先が見つからず、長い時間と距離をかけて搬送されてくるような状況が起こってしまいました。 ■「受け入れ要請を断らざるを得ない」背景にはベッドの数 ーーかなり厳しい状況になってきているのでしょうか。 はい。実は私たちの病院では、先週末ICUを含めた重症ベッドが満床になってしまったのですね。そのせいで本当に残念ではあるのですが、心筋梗塞が疑われる患者さんの受け入れ要請を断らざるを得ない状況になってしまったこともありました。 ーーベッドが全て埋まってしまったということですか。 はい。心筋梗塞とかその他の重い病気の場合は、手術をしたり、専門的な処置をしたりして、ICUに入る必要があります。ですので、私たちの病院で受け入れて、救急外来での初期対応ができたとしても、その後にその患者さんが入院できるベッドがないのです。私たちの病院の集中治療室には入れない。そういうような状況になってしまうと、患者さんに負担がかかりますので、非常に心苦しくはあったのですが、お断りをして、他の病院を当たってもらわざるを得ない状況が生じてしまったということです。 ーー山内医長の病院でも制限がかかり始めている? そうですね。今の時点では可能な限りの救急患者さんは受け入れさせていただいていますが、もう限界に近づいています。10日朝の段階で重症患者さん用のベッドは何とかこじ開けて確保できていたのですが、逆に今度は一般病棟が満床になってしまいました。それほど重症ではないけれども入院が必要という患者さんが入れるベッドがもう無い。朝は救急外来に入院ベッドが空くまで入院待機というかたちで患者さんがあふれているような状況だったのですね。結局その後、一般病床をやりくりすることができないと判断して、残念ではあるのですが、重症患者さんは受け入れることはできるのですけれども、そこまで重症ではない一般病棟に入院になりそうな患者さんは、制限をかけさせていただくことになってしまいました。 ■医療従事者が濃厚接触者に…第5波との違いは ーー医療従事者の濃厚接触判定は山内医長の病院でも影響が出ているのですか。 残念ながら当院でも感染者になってしまったり、濃厚接触者になってしまったりして勤務ができない医療スタッフが複数名発生してしまっているのが現状です。これは、私たちの病院に限ったことではなくて、沖縄県内の多くの病院で濃厚接触者となった医療従事者が多数発生してしまっていて、そのせいで今、沖縄県全体で一般診療、救急診療がひっ迫していると思っています。 救急医としては、どんな患者さんも受け入れたいという気持ちですし、スタッフもできる限り多くの患者さんを救いたいという気持ちで救急医療に携わっていますので、実際それができないという状況が、私からすればもう医療崩壊としか言えないんじゃないかなと個人的には思っています。 ーー第5波と比べて今回の第6波は違う点はありますか。 今までとカラーが違うと思います。第5波は重症化するコロナ患者さんが多くて、集中治療室に入るような患者さん、人工心肺がまわるような患者さんも多く出まして、その重症患者さんをケアするために医療がひっ迫したのですね。それが今回の第6波では、比較的軽症な患者さんが多くて、実際にコロナ病床も満床にはなっていない。その一方で、爆発的な感染者数の増大ということで、数の力で医療体制がひっ迫、崩壊に追いやられている。私たちが想定していた以上に医療従事者が感染してしまったり、濃厚接触者になってしまったりしているせいで、コロナ診療以外の救急医療、一般診療に大きな影響が出ているという意味で、全く色が違うと思います。 ーーコロナ患者以外の患者に手が回らないのはかなりの非常事態ではないでしょうか。 私たちは第5波までの教訓として、次の波が来ても、コロナの患者さんも、コロナではない患者さんもどちらにも対応できるように準備はしていたつもりだったのですが。今回のオミクロン株による驚異的な感染拡大は想定外でもあって、残念なことに非常事態に陥ってしまっていると言わざるを得ないですね。 ■「医療崩壊がすでに起こっている」救急医療の“最後の砦”を預かる医師の実感 ーー次々に要請が来るような状況? 先週から、私たちの近隣の病院でも救急患者さんの受け入れを制限しているところが増えてしまいました。そうなってくると、那覇市内の病院で何件も受け入れを断られてしまって、私たちのところしか空いていないということで、運ばれてくるケースが明らかに増えました。私たちもそれにこたえるべく、地域の救急医療の最後の砦として頑張ってはいるのですけれども、残念ながら病院内に感染者とか濃厚接触になってしまったスタッフもいて、こちらもなかなか手が回らない。病院の機能がひっ迫してき始めたことで、今後もしかしたら私たちのところでも受け入れ制限などを考えなければいけない状況に陥ってしまう可能性は十分にあります。 ーー軽症だからと甘く見られている部分もあるのでは。 確かに、オミクロン株によるコロナは、人に対する病気としてはあまり重症化しないと思うのですね。ただ、社会に対する病気、社会が抱える病気としては、その影響は本当に想像を絶するものなのです。この爆発的な感染拡大によって、圧倒的な数の力で医療体制、そして社会インフラが蝕まれてしまいます。なので、「軽症だから」といって決して甘く見ずに、今まで以上の感染防止対策、そして良識のある社会の一員として、良識のある行動をとってもらいたいなと思っています。 ■現場の医師から私たちへ“伝えたい”こと ーーいま、一番伝えたいことは。 この2年、みなさんコロナと付き合ってきて、本当に辟易していることでしょう。その気持ちはとてもよく理解できるし、私も同じ気持ちです。そして心のどこかで「オミクロン株は軽症ですむみたいだから良いだろう」とか「これはかぜとして良いでしょう」という風潮があるような気がします。しかし実際の医療現場はオミクロンがもたらしている医療崩壊とも言える困難な状況にあり、そこで必死で向き合っている大勢の医療従事者がいるのです。今こそ社会一丸とならなければ、この第6波を乗り越えることは難しいかもしれません。みなさんも今一度意識をもって、感染対策を引き続きお願いしたいなと思います。(11日20:48)

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