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「医療崩壊の始まり」の声・・・薬が足りない!血圧薬やてんかん薬も

今、処方箋が必要な薬が手に入りにくくなっています。医療現場からは「医療崩壊の始まり」との声もあがっています。一体何が起きているのでしょうか?
■都内の薬局で“薬が足らない”現状を取材 ヒジカタ薬局(東京・新宿区)の薬剤師「こちらのお薬なんかは通常今日発注したら明日入ってくるのがほとんどですけれども、年明けにしかもう入ってこないような」 調剤室の棚には「入ってくるのは、年明け」と書かれた付箋が貼られています。血圧を抑える薬やてんかんの薬など、半年ほど前から多くの薬の入荷が難しくなっているというのです。 薬剤師「どの薬がいつなくなるかわからない状況。全て危機的な状況です」「ただ、ここで余分に発注をかけてしまうと結局薬の取り合いになって、市場から薬が消えてしまうので通常の発注でやっていく」 原因は、ジェネリック医薬品が品薄になっているためです。ジェネリック医薬品とは、特許が切れた薬を別の医薬品メーカーが同じ有効成分を使って作る薬のことです。価格が新薬(先発医薬品)に比べ安いのが特徴です。ジェネリック医薬品が供給不足になっているため、新薬にも影響が出ているのです。 薬剤師「これはもう医療崩壊の始まりと言っていいのではないかと感じています」 薬を買う客からは心配の声もあがっています。 客「薬がなくなるということは命と同じなので困る」 政府は医療費を抑えるためジェネリック医薬品を推奨してきました。ジェネリック医薬品の使用割合(厚労省調べ)は2021年の速報値で「79%」と、政府が目標とする80%に迫ろうとしていますが、ジェネリック医薬品を中心に「約3100品目が品薄(日本製薬団体連合会調べ)」になっているというのです。 ■薬局だけでなく病院にも影響。東京・豊島区の耳鼻咽喉科を取材。 もちづき耳鼻咽喉科・望月優一郎院長「去痰剤(痰を切る薬)です。耳鼻科なので1日やっぱり30から50人ぐらいは出すような薬なので、毎日ね」「基本的には在庫はほぼないような形」 こちらで主に使っている痰切りの薬などについて、先月近くの薬局から供給が滞っているとの連絡があったそうです。そのため他のメーカーの薬に変更することを検討しています。ただ、メーカーが変わると薬の有効成分が同じでも添加物などが異なるためアレルギーが出る可能性もあるといいます。望月院長は今後の診療に不安を抱えています。 望月院長「患者さんにも負担もかかりますし、少し大変な状況にちょっとなりつつあるような感じ。もっとこれからひどくなりそうな感じもします」 ■ジェネリック医薬品の不足は“新薬を服用する人”にも影響。 横浜市内で暮らす出澤広さん(62)は、糖尿病や腰の痛み止めなど毎日1回で10種類ほどの新薬を飲んでいます。しかし最近、困ったことがあるそうです。 新薬を服用している出澤広さん「アレルギー性の花粉症系の薬、今まで飲めていた薬が、弱い薬しか手に入らなくなってしまって、飲まないよりは良いって形で飲んでいるが、やっぱり全然効き目が無くて」 今、目の充血や喉の痛みに悩まされているというのです。 出澤さん「薬剤師さんいわく、メーカーの方で製造が追いついてないというか、いつ製造が追いつくかどうかっていうのは“未定”だとずっと言われている」 ジェネリック医薬品の不足で、これまで服用していた新薬が手に入らなくなり、別の新薬に変更したものの効き目が弱くて困っているそうです。 「正直言って今の弱くなった薬も、そうやって集中的に皆さんが使うようになったら“これもないですよ”っていうふうな形に言われると、どうなのかなっていうところの心配があります」 ■“薬が足りない”背景にはメーカーの不祥事などが・・・。 発端は去年、ジェネリック医薬品メーカーに法令違反が見つかり、その後、複数のメーカーが業務停止処分を受けるなど不祥事が続いたことです。これを受け、医療機関や薬局などが在庫を抱えようとしたため供給不足に拍車をかけたというのです。また、薬の有効成分「原薬」の多くを海外からの輸入に頼る医薬品はコロナ禍で輸入が遅れ、生産にも影響が出ました。さらに先月、医薬品などを保管していた大阪の物流倉庫で起きた火事も追い打ちをかけました。 ■安定供給はいつになるのか? 神奈川県立保健福祉大学大学院・坂巻弘之教授「元々、医薬品の生産、医薬品の製造というものは計画的に作っているで、元々その製造キャパシティにあまり余裕がなかったっていう状況にあります。すぐに増産できるような体制をとれればいいが、新しく工場を作って新しい人を配置する、こういったことを考えると、(安定供給には)やはりあと1年から長くて2年ぐらい時間かかるのではないかというふうに思います」 ■スタジオ解説“処方薬”不足の具体的な影響は? 手に入りにくくなっているのは、処方箋の必要な薬、いわゆる処方薬です。処方薬を扱う薬局にどれほど影響がでているのか、東京都薬剤師会が調査しました。1000か所の薬局のうち94%が「納品が遅れて業務に影響が出る」と答えていて、ほとんどの薬局で処方薬の納品が遅れているということがデータからもわかります。さらに「納品が遅れている品目数」については91%が「4品目以上」と回答しています。東京都薬剤師会の担当者は「通常なら注文翌日に納品されるが、薬によっては現在1週間以上かかる」と影響の大きさを話しています。この大きく空いてしまった穴を埋めるために、代替薬の処方などで対応が行われているということです。 また、今回取材した東京・新宿区の「ヒジカタ薬局」に、どんな処方薬が足りていないのか聞きました。「血圧を下げる心臓の薬」「てんかんの発作を防ぐ薬」などが特に不足しているといいます。そのほかにも「アレルギーを抑える薬」といった我々の身近なお薬というのも手に入りにくくなっているということです。処方薬不足が解消されるまで1、2年はかかるということですが、処方箋が必要ない市販の薬に関しても影響が出てくるのかということも非常に気がかりな点です。 この点について、医薬品に詳しい神奈川県立保健福祉大学大学院・坂巻弘之教授は「(処方箋が必要ない)市販薬に関しては、製造数がかなり多く、十分に供給できる。安心して大丈夫」と話しています。(14日23:18)

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