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どうなる北京五輪「外交的ボイコット」日本政府の判断は

■開幕まで2か月、色々な意味で注目の北京五輪
2022年の北京冬季オリンピック開幕まで4日でちょうど2か月。東京にある「中国文化センター」にはアイスホッケーやカーリングを体験できたり、ゴーグル型の端末を装着しVR=仮想現実で競技会場の雰囲気を味わったりできるスペースがオープンした(5日まで開催)。PRイベントで挨拶した孔鉉佑駐日大使は「大会の最終準備は着々と進んでいる。多数の外国の技術者の招聘を通じ、世界中の経験を糧に最高の大会運営を目指している」とメディアに向けてアピールした。 今回のオリンピックは、世界最大の温室効果ガス排出国である中国が、気候変動という地球規模の課題にどう取り組んでいくのかを世界に示す場にもなる。孔大使は「会場は100%クリーンエネルギー仕様で、100%カーボンニュートラル(=温室効果ガスの実質ゼロ)を特徴とする大会だ。太陽光発電と風力発電がエネルギー源だ」と強調した。スケートリンクに必要な氷を製造する際に温室効果ガスを初めて利用するなど、大会のいたるところで環境保全の技術が導入されるのだという。 一方、このオリンピックは「ボイコット」が度々取りざたされる異例の大会でもある。 ■「外交的ボイコット」論 欧米で相次ぐ 始まりは4月だ。アメリカ国務省の報道官が会見で「我々は一貫して新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(集団虐殺)など、中国政府による深刻な人権侵害への懸念を指摘してきた」として、同盟国等との“共同ボイコット”の可能性も排除しない考えを示した。ただ直後に国務省はJNNの取材に「同盟国等と共同ボイコットについて協議したことはない」と回答、発言のトーンの調節を図ろうとしていたようにも思える。一方、中国外務省の報道官は「スポーツを政治化することはオリンピック憲章の精神に背き、各国の選手の利益とオリンピック事業を損なう」と強く批判した。 5月には民主党のペロシ下院議長が議会公聴会で「ジェノサイドが起きている中で各国の首脳が中国に行けば、人権問題について語る道徳的権威があるのか、疑問を投げかけられる」として「外交的ボイコットを提案する」と発言した。「外交的ボイコット」となれば、選手は競技に参加するものの政府要人は派遣されないことになる。 6月には、この「提案」を受けた形でブリンケン国務長官も「北京オリンピックに対する共通のアプローチについて同盟国などと協議している」と議会で証言した。中国外務省は4月の時と同じ報道官が同じ表現で反発、「オリンピックをボイコットするいかなる提案にも断固反対する」とけん制もしている。またアメリカ議会上院も6月に「外交的ボイコット」を求める内容を含む中国への対抗法案を賛成多数で可決している。 7月にはEU=ヨーロッパ連合が動いた。EU議会は加盟国などに対し、香港やウイグル、チベット、内モンゴルなど人権状況について中国政府が検証可能な改善を見せない限り、政府代表や外交官への北京オリンピック出席の招待を拒否するよう求める決議を採択した。イギリス下院でも同様の動議が賛成多数で可決されている。法的拘束力はないが、当時のイギリス外相も「自身が出席する可能性は非常に低い」と発言したという。 そして11月18日、アメリカのバイデン大統領が記者団から「北京オリンピックの『外交的ボイコット』を支持するのか」と問われ「検討している」とカメラの前で答えたことで、再び注目が一気に高まった。20日にはイギリスメディアが、ジョンソン首相もアメリカに続き外交的ボイコットを検討していると報じている。30日にはオーストラリアのスポーツ相がJNNの取材に対し外交的ボイコットについて「検討中」と認め、近く最終決断すると明らかにした。 こうした国々が一斉に「外交的ボイコット」を打ち出した場合、国際社会に与えるメッセージは大きいだろう。そして日本は今、難しい立場に置かれている。 ■岸田首相「日本は日本の立場」、自民内の空気は バイデン大統領が外交的ボイコットについて「検討している」と発言した直後の11月19日朝、岸田首相は待ち構えた報道陣に「それぞれの国においてそれぞれの立場がある。日本は日本の立場で物事を考えていきたい」と語った。コロナ禍で東京オリンピックが開催される2か月あまり前の5月、中国の習近平国家主席はIOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長に「東京オリンピックの開催を支持する」と伝えていた。偶然だろうが、似たようなタイミングと言えるかもしれない。長く外相を務めた岸田首相ゆえか、コントロールされた発言のようにも感じた。 一方、自民党内には違う空気が漂う。 岸田氏の派閥出身で政策に明るいとされる林芳正外相は、就任前は日中友好議員連盟の会長を務めていた。アメリカ議会にもパイプがあり、韓国の国会議員とも親交があるなど議員外交を通じて幅広い人脈を持つことでも知られる。ただ外相就任の際に林氏は日中友好議連会長を辞任している。「職務遂行にあたって無用の誤解を避けるため」と説明した。「誤解」が何を意味するのかは詳らかにしていないが、対中国での毅然とした姿勢に影響するのでは、という意味での党内外からの警戒感では、と理解できる。 また中国・王毅外相と就任後初めて電話会談した際、中国訪問を要請されたが、党内から「完璧に間違ったメッセージを海外に出す」(佐藤正久・党外交部会長)として慎重な対応を求める声が上がった。中国による領海侵入が続いていること、アメリカなどで「外交的ボイコット」が検討されていることが理由だ。 こうした党内の声があることも理解はできる。ただ、外交部門の責任者同士のコミュニケーションも重要だ。難しい相手であるからこそ意思疎通も重要となる。また議員外交は、政府による外交ではないものの、影響力を持つ議員を通じた非公式の外交ラインとも表現できる。過去、ある議連の幹部を取材したことがある。政府間の交渉に先立って非公式のアイデア等を伝え合うためのパイプ役を務めていた。行き詰まった関係に風穴を開けようと努力する様子が垣間見えた。中国に毅然とした態度で臨むことはもちろんだが、相手の考えを知るためのパイプも同時になければ、溝を埋めることは一層難しくなりはしないだろうか。 ■「かなり厳しい空気」で首相の判断は こうした空気の中、岸田首相は「外交的ボイコット」についてどう判断するのだろうか。 岸田氏を知る議員は「党内はかなり厳しい。何もしないわけにはいかないのではないか」と話す。また党内からは「中国では女子テニスの彭帥選手の人権問題も出てきている、WTA=女子テニス協会も決断したのにIOCは人権には触れない」と、オリンピックの運営に対する批判も聞かれた。東京大会の際、中国から閣僚級が訪問したことを踏まえ、カウンターパートである日本オリンピック委員会やスポーツ庁長官が適任だと指摘する向きもある。 2022年は日中国交正常化50周年という節目だ。冒頭触れたイベントでの挨拶で孔鉉佑大使は「新しい時代にふさわしい関係の構築、政治的共通認識を導く年だ」と位置づけた。2か月後の北京オリンピックが、これからの2国間関係にどう影響するのかも注目点となる。 TBSテレビ報道局 外信部デスク 久保雄一(4日15:00)

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