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旭川女子中学生“いじめ”事件 助けを求めるも学校側は“いじめ”を認めず・・・いじめを防ぐには?背景には問題点も【報道特集】

北海道旭川市で凍死した状態で見つかった廣瀬爽彩さん。なぜ学校はいじめを認めなかったのか。関係者の話から浮かび上がった数々の疑問。いじめを防ぐことはできるのか。
■母が感じた娘の異変 「いじめ」を認めない学校側 今年3月、北海道旭川市の公園で凍死した状態で見つかった当時中学2年生の廣瀬爽彩さん。幼いころから絵を描くのが好きだった。爽彩さんの母親がJNNの取材に応じた。母と一人娘の母子家庭。 母親は希望を胸に中学校に通う娘の姿を見るのを楽しみにしていた。 爽彩さんの母親:朝、学校の鍵が開く前に行く。先頭に並んで開くのを待つのが好きな子でした。(中学も)最初の方はワクワクしている感じというか、やる気に満ち溢れている感じ。将来生徒会に入りたいから学年委員長やる。部活もやりたいし、塾も通いたい、英会話もやり続けたい、全部やりたいっていつもキラキラしている感じ。 娘の異変を最初に感じたのは2019年、中学入学から間もなくのことだった。 爽彩さんの母親:4月の後半、5月のはじめあたりから様子がおかしくなって、部屋に籠るようになった。泣いたり、誰かにごめんなさいって言ってるような声が部屋から聞こえるようになった。 爽彩さんは夜の公園などに同じ学校や他校の上級生数人から呼び出されるようになった。母親が止めると怯えて泣き出したという。母親はいじめを疑い中学校に相談した。しかし・・・。 爽彩さんの母親:(担任は)『ふざけて呼んだだけです』とか『あの子たちはおバカな子で選挙カーを見ただけでも追いかけるような子だから気にしないで下さい。いじめはありません。ふざけただけです、仲のいい子なんです』っていう説明をされました。 そして6月。母親の疑いが確信に変わる出来事があった。爽彩さんが川に飛び込み、自殺を図ったのだ。当時、現場では10人ほどの生徒や児童が爽彩さんを囲んでいたという。 爽彩さんの母親:携帯が学校から鳴って、先生も慌てた様子で『公園横にある川に来てください』と。『爽彩ちゃんが川に入っている』という連絡を受けて。 爽彩さんは精神的なダメージを受け、その日のうちに入院。心配になった母親が、爽彩さんの携帯電話を確認すると、そこには爽彩さんのわいせつな画像や動画がいくつも残されていた。上級生らに撮影を強要されて、SNS上で拡散されていたのだ。 爽彩さんの母親:携帯を見て、もう気が気じゃなくて、すぐに警察に言わなきゃ、これは事件だってなって。教頭先生が『まず警察に行く前にまず僕たちにもみせてください』と。そこで教頭はLINEのやりとりを写真で1枚1枚撮って、『学校もこれ調べます』と伝えられた。 画像のやりとりを確認した警察は捜査を開始。少年1人が児童ポルノ禁止法違反に違反する疑いがあったが、14歳未満で刑事罰には問えないため、触法少年として厳重注意しただけで終わった。一方、学校はいじめとすら認めなかった。爽彩さんの自殺未遂から約2か月後の2019年8月、母親は教頭との面談でこう言われたという。 爽彩さんの母親:『学校としてはいたずらが過ぎただけであっていじめではないし、悪気があったわけではない』と伝えられました。何度も。『じゃあ何をされたら、どこまで何をされたらいじめですか?もっとひどいことをされなければいじめにならないんですか』って聞きました。でも教頭は『いま加害者と言われている子にも未来があるんです』『お母さんはどうしたいんですか?』と何度も『お母さんはどうしたいんですか?』できないのはわかっているけど『娘の記憶を消してください』って。『お母さん大丈夫ですか?頭おかしくなっちゃったんですか?病院行った方がいいですよ』と言われました。 教頭はさらにこう続けたという。 爽彩さんの母親の手記より教頭のコメント「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか。10人ですよ。1人のために10人の未来をつぶしていいんですか」 本当にこんな発言をしたのか。教頭はJNNの取材にこう回答している。 教頭の回答文書「調査の中で、私個人の対応や発言につきましても、事実関係(記録等)に基づいて誠実に報告させていただく予定です」 2019年9月、学校と旭川市教育委員会は「いじめと認知するまでには至らない」として調査を終了した。その直後、旭川の地元誌が爽彩さんの自殺未遂の背景に「いじめ」があったと報道。すると学校は校内向けにいじめを完全否定する文書を作った。 校内文書のコメント「ありもしないことを書かれ、生徒の皆さん保護者の皆さん・先生方も含め、みんなが心を痛める状況となりました。根も葉もない記事に関してどこの誰が関わっているだとか、間違った情報がライン等で回っているとのことです」 爽彩さんは病院を退院すると旭川市内の別の中学へ転校した。だがPTSD=心的外傷後ストレス障害に苦しみ、学校に通えない状況が続いた。 爽彩さんの母親:『本当は学校に行きたいけど、生徒たちが怖い。目が合うだけでも怖い』っていつも言っていて。買い物とかも同年代の子を見るとおびえてしまったり怖くなったり、白目むいちゃって泡ふいたりとか。 ■ネット上の友人に語ったいじめの惨状 少女が自ら命を絶つまで 爽彩さんはインターネット上で知り合った友人に自分が受けたいじめについて打ち明けるようになった。 爽彩さんがネット上の友人に送ったメッセージ「会う度にものをおごらされる。最高1回3000円、合計1万円超えてる」「性的な写真を要求される」「精神的に辛いことを言われる。今までのことバラすぞなど」「いじめてきてた先輩に死にたいって言ったら『死にたくもないのに死ぬって言うんじゃねぇよ』って言われて自殺未遂しました」 男性が進路相談を受け付ける内容のインターネット上ライブ配信で2020年11月、爽彩さんはいじめを受けていたと告白していた。 爽彩さんの声:いじめを受けていたんですけど、そのいじめの内容が結構きつくて、なかなか納得がいかないっていうか、処理できないっていう気持ちになってしまってて。すごい簡単に内容を説明しますと、まず先輩からいじめられてたんですよ。先輩にいろんなものをおごったりとか、ちょっと変態チックなこともやらされたりとかもしたんですけど。そういうのにトラウマがあって学校自体に行けなくなってしまって。学校に行くためにはどうしたらいいんだろうって考えたときに何も自分じゃ思いつかなくて、学校側もいじめを隠蔽しようとしていて。人が怖いし、人と話すのも苦手だし人に迷惑かけるのも怖いしみたいな感じになってしまっていて、人に迷惑かけることとかがいけないことだって思ってる節が私の中であって。私自身すごいメンタル状況が不安定で、学校に行くと1〜2時間でギブアップしちゃうんですよ、基本的に。 この頃、爽彩さんは高校進学に向けて少しずつ前を向き始めていた。 爽彩さんの母親:12月の後半というか正月に近い時期に『高校に行きたい』と食事中に言われて。私はその時すごくうれしくて。なんかよくなったんだな、まわりの友達に電話で自慢するくらい・・・良くなったなって思っていたんですけど・・・。 しかし・・・今年2月13日。 爽彩さんのメッセージ「ねえ、きめた。今日死のうと思う。今まで怖くてさ。何も出来なかった。ごめんね」 爽彩さんはネット上の友人にメッセージを残し、連絡を絶った。母親が仕事で外出したあと、爽彩さんは上着も着ずに家を出て行った。この日、旭川の夜はマイナス5度を下回る気温だった。自宅から2キロほどの公園。雪の下から遺体が見つかったのは、1か月後のことだった。 いじめを訴え続けていた爽彩さんの声は、なぜ届かなかったのか。おととし6月、爽彩さんが自殺を図った現場を歩くとあらためて疑問が浮かび上がる。許可を得て川へと降りた。土手を下から見上げるとその高さが分かる。10人ほどの子どもたちが見ている前で柵を乗り越えた爽彩さん。コンクリートの土手から、約4m下の河川敷に滑り降りた。 金平茂紀キャスター:子どもたちが柵の上から見ていたということなんですけど、中には携帯電話で撮影していた子もいたみたいです。 そして、爽彩さんは川へ飛び込んだ・・・。 金平キャスター:爽彩さんは事前に中学校に通報していたということなんで、先生も駆けつけたときには、ずぶ濡れの姿で引き上げられたと。当時の凄惨な状況は想像するしかないですけど。それにしても、学校の先生や警察官や住民も見ていた中で、その後もずっと“いじめがなかった”とどうして言えたのかと、この現場の状況を見ただけでも思いますね。 ■「いじめ」調査まで約2年 経緯に保護者から挙がる疑問の声 学校は、なぜ「いじめ」を認めなかったのか。爽彩さんの母親の代理人・石田達也弁護士は・・・。 石田弁護士:誰がどう見てもこれに気がつかないのはおかしいでしょう、というシチュエーションがいくつもあるんですよ。もうシグナルじゃないんですね、もはや。もう目の前で起きている現象。それに気がつかない。いや、気がつこうともしない。その特異性が今回の事件のポイントになってくる。いじめが『人を死に追いやる行為』だという深刻さを誰もその場にいた人たちが感じ取れなかった。 金平キャスター:背景の一番の大きなもの、これは何だというふうに思いますか? 石田弁護士:子供ではなくて学校を守っている。学校という組織を。 事態が急展開したのは今年4月。爽彩さんの遺体が見つかってから1か月後だ。文春オンラインが死の背景にいじめがあったと報じた。学校や旭川市教育委員会には苦情や問い合わせが殺到。事態を重く見た旭川市長が調査に動いた。 旭川市 西川将人市長(当時):どのようなことが事実としてあったのかをしっかりと調査する必要がある。もしいじめだということになれば、これまでの対応にどこか問題があったのだろうと。 市教委はいじめ防止対策推進法に基づく重大事態として第三者委員会を設置。ようやく「いじめの疑い」があると認めた。ここまで2年もかかったのはなぜか。市教委はJNNの取材にこう答えている。 旭川市教委(取材に対して)「事案に至る経緯や子ども同士の関係など、当時学校が調査した内容と報じられた内容が異なっていた。報じられた話が事実であるならば、重大事態であるということになった」 中学校が開いた保護者向けの説明会では疑問の声が相次いだ。 男性保護者:あのおぞましい行為をいじめじゃなかったと判断している学校、この中途半端な説明会でどれだけみんなが納得しているのか。 学校や市教委にはいじめと認識して対応するタイミングがいくつもあった。JNNが情報公開請求で入手した学校の内部文書。自殺未遂直後のおととし7月11日に作成されたもので、加害生徒への対応がこう記されている。 学校の内部文書「生徒に対して、きちんと謝罪できる準備はできているのか?」 「今回の一連のできごとは、重大な事案であることを忘れてはいないか?」 爽彩さんを巡る一連の出来事について学校は文書に「重大な事案」と記していた。さらに、旭川市教委を指導した北海道教育委員会の文書から重大な事実が分かった。学校と市教委がいじめと認知するには至らないとして、調査を打ち切った1か月後のことだった。道教委は学校はいじめと認知し、保護者と一緒に対応する必要があると市教委に指導していたのだ。 道教委の文書「当該生徒がいじめではないと話していても、客観的に見ていじめが疑われる状況である。特に当該生徒が川に入った際、『死にたい』と繰り返し訴えていることから『心身の苦痛を感じている』ことが考えられる」 文書には再三指導を促すような道教委のメモ書きも残されていた。それでも再調査が行われなかったのは何故なのか。問題の背景に市教委と学校のいびつな関係があることを指摘する市議会議員もいる。 能登谷繁 旭川市議:当時の学校長は元々教育委員会の幹部だったので、当時の(市教委)担当者たちはみんな部下ですよね。その逆転した関係というところも巷では言われている。 当時の中学校の校長は2016年まで市教委の学校教育部次長を務め、その後2018年に赴任していた。 能登谷 旭川市議:第三者員会の調査を聞かないとわからないが、教育委員会は指導するために頑張った面もあるとは思う。全く言いなりだったとは思えないが、最終的には(校長に)押し切られていると言ってもいい。 11月10日、当初いじめの疑いすら認めなかったことについてJNNの取材に中学校はこう回答した。 中学校の回答(取材に対して)「当時の校長の判断や認識等も含め、間違いがあったかもしれないということも前提に、現在、委員会の調査の中で検証いただいているところです」 爽彩さんの母親:本当にあのことっていうのは私の中ではいじめじゃなかったらじゃあ何なんだろうっていうのがあったので、『疑いのある』って言われたときにすごく当たり前なんですけど、なんでもっと早くできなかったんだろう。どうして入院している爽彩がいちばん苦しんでいる時期にそういう判断をしてくれなかったんだろう。 ■広がる衝撃 いじめで息子を亡くした男性が語る無念 爽彩さんの死に、強い衝撃を受けた人がいる。10年前、滋賀県大津市でいじめを苦に、当時中学2年生の息子が自殺した男性。爽彩さんの死を沈痛な思いで受け止めていた。 大津市で自殺した男子中学生の父親(56):初めて聞いたときは言葉で言い表せなくて、とにかく彼女は助けを求めたにも関わらずそれを助けない大人、教師がいるっていうこと。加害生徒だけではなく、教師に対してもいじめられた、見放された。 大津市の教育委員会は当初、いじめと自殺との因果関係を認めなかった。ところが自殺から9か月後、警察が市の教育委員会と学校を家宅捜索。そして生徒へのアンケートから重要な事実が明らかになった。亡くなった息子が自殺の練習をさせられていたことや、手をひもで縛られ、口をガムテープで塞がれるなど悪質ないじめを受けていたのだ。その後、当時の市長のもとで第三者委員会が設置され、自殺から1年3か月後ようやく「いじめが自殺の直接的な原因」と認定された。 この大津事件がきっかけで2013年にできたのが“いじめ防止対策推進法”だ。法律には、父親の強い思いが込められている。 男子中学生の父親会見(当時):息子には100%ではないけども、まずはここから、これからがスタートだと伝えたいと思います。 法律では、いじめを「児童らが心身の苦痛を感じているもの」と広く定義。いじめによって命が危険にさらされるなどの「重大事態」が起きた場合に、学校や教育委員会が調査をすると定めている。ところが大津事件で息子を失った父親は、“いじめ防止法”が浸透していないと訴える。 男子中学生の父親:資料を出さない。隠蔽、保身に走るという対応についても全く同じ。いじめ防止対策推進法ができても、(法成立から)8年たってもまだ起きる。もしかして息子の事件よりもっとひどい。かなりひどい。情けない。 父親は、さらに実効性のある法律に変えていく必要があると訴える。 日下部正樹キャスター:いじめ防止対策推進法ができたときに、これは息子さんが作った法律だと胸を張っていってらっしゃいました。この思いは変わりませんか? 大津の父親:変わりませんね。だから命がけで作った法律であれば、法律を実効性のあるものに。子どもの命が助けられる。そういうものにすることについては、私は使命だと思ってるので。 中学入学直後から凄惨ないじめを受けていた爽彩さん。今年4月になって、ようやく旭川市教委は、いじめの疑いがあるとして「重大事態」と認めた。市教委は、“いじめ防止法”に基づいて第三者委員会を設置したが、調査は遅々として進んでいない。関係者への聞き取りは今月始まったばかり。報告がまとまる見通しは未だたっていない。遺族側の代理人を務めている石田弁護士は、「第三者委員会」の在り方にも問題があると話す。 石田弁護士:(第三者委員会の)設置者は教育委員会。教育委員会は、言ってしまえば調査を受ける側。設置する側から見て公平です中立ですっていう委員会。じゃあ、被害者から見ての公平性中立性ってなんですかって。そこは顧みてもらえない状態。 第三者委員会のメンバー2人が調査対象者と関係があったことがわかり、調査から外れる事態となっている。石田弁護士は、誰のための法律なのか原点に立ち返るべきだと強調する。 石田弁護士:子供を守りましょうということ。当たり前のこと。子供の命や健康や財産をいじめから守りましょう。被害者を守ってくださいという法律。被害者のための法律ですよ。被害者が二度と出ないようにする、これが本来のあるべき姿。 (報道特集11月27日放送より抜粋・編集)※情報提供は番組ホームページへ

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