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【記者に聞く】最近よく聞く“悪い円安”ってなに?家計にどんな影響があるの?

外国為替市場で、円安が進んでいます。円安というと輸出が増加するなどのメリットが期待されますが、最近「悪い円安」いう言葉を耳にする機会が増えてきました。いったいどのような事なのでしょうか?TBS経済部の証券・為替担当、品田亮太記者に聞きました。
ーーそもそも、今は円安なの? そうですね。今年1月の時点では1ドル104円台で推移していましたが、11月17日には一時1ドル114円97銭をつけました。さらに、23日には1ドル115円をつけ、今年に入って、10円ほど円安が進んでいるということになります。約4年8か月ぶりの円安ドル高水準になっているのです。 ーー円安っていいことなんじゃないの? もちろんメリットもあります。円安になると、海外でより安い価格で販売する事ができるため、海外でモノを売るメーカーは価格競争で勝つことができ、業績が良くなります。トヨタ自動車は、円安効果による営業利益の押し上げが、約4300億円に上りました。「モノを作って海外で売る=輸出」の企業にとっては、円安は追い風になりますね。 ーー円安のデメリットは? 「海外のモノが高くなる」という点が円安の一番のデメリットです。完成品を日本に輸入する場合には、国内での販売価格が高くなってしまいます。さらに今は、原油や金属など、資源の価格が高くなっています。このようなタイミングで円安が進むと、サービスや商品価格の値上がりにつながります。 ーー「悪い円安」ってどういうこと? これまで円安は、国内でモノを作るとメリットがあったのですが、今、多くの大企業は海外でモノを作って海外で販売するという方向にシフトしています。そのため、日本はかつてほど円安の恩恵を得られていません。さらに今は新型コロナの感染拡大が落ち着いて、少しずつ日常を取り戻し始めています。今、大幅な円安が続くと、企業業績の圧迫や日用品の値上がりなどが起き、経済回復の足を引っ張りかねません。円安のメリットよりデメリットの方が私たちへの影響が大きくなる可能性があるため、「悪い円安」と言われているのです。 ーー「悪い円安」私たちの生活への影響は? 取材をしてみると、私たちの生活に近い商品などが、値上げせざるをえない状況にあることがわかりました。東京・渋谷区の100円ショップ「ザ・ハンドレッド・ストアーズ」では、これまで事前に安く輸入した在庫でしのいでいましたが、値上げを検討しています。円安で仕入れ値が上がっている影響で、一部商品では100円のものを200円に値上げするなどして対策をとっています。引地英一店長は「とても心苦しい」と胸の内を話します。健康器具「メディカルグリップ」を製造する東京・大田区の日進工業では、これまで1キロ30〜40円で仕入れていたプラスチック樹脂の価格が100円に値上がり。商社が海外から輸入してきた原材料を購入していることから値下げ交渉ができない為、竹元盛也社長は、「今後は販売先に値上げ交渉を行わざるをえない」と言います。 ーー値上げは行われる? ここまで「値上げせざるを得ない」という現場の声を紹介しましたが、一方で値上げは簡単な事ではありません。企業やお店にとって、値上げは「客離れのリスク」を伴います。ブランドを確立した一部の大企業を除くと、お客さんが離れていくことを恐れ、値上げできない企業が多いのが現状です。しかし、大和証券の末廣徹シニアエコノミストは「値上げをしなくても家計への影響は大きい」と話します。 大和証券・末廣徹シニアエコノミスト:結果的に企業が負担したとしても最終的に家計に跳ね返ってくるので、最終的には家計が負担するという事になると思う。 値上げをしなかった場合には、企業の業績が悪化します。すると、企業で働く私たちの給料が下がり、結果的に値上げしてもしなくても、私たちの生活が苦しくなる可能性があるということです。 ーー何で円安が起きている? 日本とアメリカの、金融政策の違いがポイントです。具体的に言うと「日米の金利差が拡大していく」ということが、円安の原因です。日銀は、目標とする「2%の物価上昇」の達成に向けて、大規模な金融緩和を継続する方針を示しています。新型コロナで落ち込んだ日本国内の景気が回復していないことから、当面、「超低金利政策」をやめられる状況にはありません。一方で、アメリカでは、景気回復を受けて、中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が、金融緩和を縮小していく方針を示しました。今後、金利が引き上げられる可能性が非常に高く、市場関係者の間では「いつ始まるのか」という点がポイントになっています。世界中の投資家は、「金利が低い円」より、「金利が高いドル」で運用を行ったほうが、より多くの利益を得ることができるため、円を売ってドルを買うという動きをみせているんです。 ーー悪い円安はいつまで続く?「日米の金利差」に加えて、備蓄油の放出などで話題になっている「原油など資材価格の高騰」が、「悪い円安」を生んでいます。これらが解消されるまでは、景気が上向くプラス材料は少ないとの見通しです。第一に、世界的に再拡大が起きている新型コロナを抑え込めるのか。さらには原油高騰の原因にもなっている「OPECプラス」(12月2日開催)の結果も大きく関わってくる可能性があります。世界の経済動向など様々な要素が、今後の私たちの生活に深い影響を与えそうです。 品田亮太(報道局経済部)2014年入社。アナウンサー・社会部警視庁担当記者を経て現職。(26日16:00)

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