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中朝国境で“北朝鮮外交”ナゾの動き 北朝鮮側に渡る車を捉えた!

10月10日は「朝鮮労働党創建記念日」。去年は首都平壌で軍事パレードが行われ、ICBM=新型大陸間弾道ミサイルが公開されたが、今年の開催について情報はない。ただ北朝鮮は先月だけで様々な種類のミサイル計6発を発射するなど、兵器開発に余念がない。
ただ、国連制裁などで経済は苦しいはず。また、新型コロナウイルスを恐れて最も重要な貿易相手の中国との国境を封鎖してから、すでに1年8か月が経っている。国境を介した交易が再開するとの情報は何度も流れたが、変化はないのか。TBS/JNN北京支局は中朝国境地帯の定点観測取材を行っているが、9月下旬に目撃したのは“北朝鮮外交”のナゾの動きだった。 午前9時。閑散としていた中国側の税関から、1人また1人と出てくる防護服姿の集団をカメラが捉えた。建物の消毒でも行うのかと思って見ていると3台の車が入ってきた。消毒液だろうか、入念にスプレーが吹きかけられる。防護服の人物は車の中にも乗り込んで作業していた。 実は3台の車のナンバーは、いずれも在中国・北朝鮮総領事館のもの。3台は封鎖されているはずの国境に架かる橋を渡って北朝鮮側に向かった。別のセダンの車1台が税関の駐車場まで来ていたが、見送りだったとみられる。 この北朝鮮の外交車両の動きが具体的に何を意味するのかはわからない。ただ関係者によると、任期を終えた中国駐在の前大使や金正恩総書記の異母兄・金正男氏殺害事件による国交断絶でマレーシアから国外退去処分となった外交官らは、国境封鎖の影響で中国側に留まっていたという。これらの人たちを含め、北朝鮮の一部の外交官が戻り始めた可能性がある。 中朝国境の川「鴨緑江(おうりょくこう)」に変化は無いのか。行ってみると、北朝鮮側には広い範囲で柵ができていた。3か月前は設置作業中だったが、柵は“密輸防止”用だとみられている。当局が管理できない人・モノの動きは、やはり許されないのだろう。 ただ去年1月からの国境封鎖で食糧事情が切迫していることは金正恩総書記も認めている。北朝鮮の専門家によると首都平壌のコメの値段は今年4月に比べ、すでに4割ほど上がっているという。先月(9月24日)の朝鮮中央通信は「農業部門が秋の収穫に力を入れている」と報じているが、我々に見えた範囲ではむき出しの山肌が目立ち、農作業をしている人の姿はまばらだった。 中国側の「国境の街」にはどんな影響が出ているのか。“一歩またげば北朝鮮”という観光スポットがあるほど近い中国・丹東市には北朝鮮の品を扱うエリアがあるが、シャッターを下ろしている店が目立った。 「感染拡大が続く限り交易の再開はできないと思う」「観光客が来ないから店のお客さんも少ない」こうぼやくのは、ナマコなど北朝鮮の海産物を売る女性だ。中朝国境を訪れる国内の観光客も激減しているのだという。 また、こんなところにも影響が出ていた。“北の女性”たちが働く北朝鮮レストラン。彼女たちの賃金は北朝鮮にとって貴重な外貨獲得の手段とされるが、訪問した時にはレストランは個室を除いて我々以外の客は一組だけで静かだった。 かつては懐メロ「北国の春」が披露されたりしたこともあり日本で報じられることもあった歌や踊りのショーも、今は個室だけだという。 実は、国連制裁で彼女たちを含む北朝鮮労働者の送還が義務づけられているはずだが、従業員は「国境封鎖の影響で戻れないのだ」と話していた。北朝鮮の従業員はいずれも新型コロナワクチンの接種を終えたという。対外的には新型コロナ感染者はいないと主張し続け、金正恩総書記が出席する行事はノーマスク状態の北朝鮮。ただ「超特級 非常防疫措置」という厳しい対策は続いているとみられ、国境の北朝鮮兵士や一般の人たちは基本的にマスク姿だ。 船での交易は始まっているものの、専門家によると陸上での交易再開の見通しは立っていないという。経済とコロナ対策の両立は世界共通の課題だが、厳しい冬を控える北朝鮮にとって、これから一段と重くのしかかってくると言えそうだ。 (取材:TBS/JNN北京支局 延広耕次郎)(10日19:00)

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