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【調査報道23時】8回着替えて5万円 コロナ補助金 組織的不正受給の手口

 SNSで拡散する「リモート会議で8回服を着替えれば、誰でも5万円受け取れる」という謎の書き込み。コロナ対策などの100億円規模の補助金をめぐり、大がかりな不正が行われている疑惑が独自取材で浮上しました。徹底追跡します。
 愛知県名古屋市。 車内で電話で話す村瀬健介キャスター「どういった格好で来られます?サンダルに短パンにTシャツという感じですね?」  私たちはある人物と待ち合わせをしていた。 村瀬「あの人っぽいね。サンダルだもんね。」(車を出る)「こんにちは。TBSの村瀬です」  現れたのは情報提供者の男性だ。“国の補助金を騙し取る、大掛かりな不正が横行している”そんな情報を、TBSの情報提供窓口「TBSインサイダーズ」を通して寄せてくれていた。 情報提供者の投稿『現在、SNSにおいてまたもや不正受給ができる案内が広がっています』 情報提供者「私が知ったのがフェイスブックの投稿欄から1時間Zoomを見るだけで最大10万円もらえますと。不正ですね」  悪用されているのは「デジタル化応援隊事業」という国が新型コロナ対策などとして設けた制度。個人事業主が、リモートワークを導入する場合などに、IT専門家からZoomなどで数十時間のコンサルティングを受ければ、その費用として、最大30万円の補助金が受けとれる、というものだ。その補助金を、実際は個人事業主でなくても、誰でも簡単に受け取る方法がある、グループに入らないか、との勧誘がSNS上で広がっているというのだ。  一体、どんなカラクリなのか。調査のため勧誘を行っているグループにSNSで接触を試みた。すると・・・ 村瀬「かかってきた、かかってきた」  グループのメンバーから電話がかかってきた。 不正受給グループ「受講生(中小企業役)の方は簡単なんですよ。こちらでコンサルタントをご紹介しますのであとはコンサルタントと日程を合わせてZoomを行っていただくと。で、5万円なんですけど」  グループの説明はこうだ。まずは、個人事業主になりすます。そして、グループが紹介するコンサルタントとリモートで面会。長時間のコンサルを受ければ、それだけ受け取れる補助金が増えることになるが・・・ 不正受給グループ「そのZoomは、本当は60時間コンサルを受けるんですけど、その60時間を“時短”する形で」村瀬「実際には60時間も受けなくていい?」不正受給グループ「60時間で契約はするんですけど、コンサル自体は一切受けずにコンサルをした証明を作るための時間を30分Zoomで使うっていう感じですね」  実際には一切コンサルを受けないのに、60時間受けたように装う。必要なのはわずか30分。その時間で偽装工作をするという。 村瀬「その30分間で何をする?」不正受給グループ「着替えて写真撮るだけです。コンサルタントの方から指示があるんですけど、『はいじゃあ撮りまーす』って、カシャカシャって撮って、じゃあ着替えてくださいって言って上だけでいいんで着替えて、また撮って、をひたすら8回繰り返すだけです」  30分間のリモート会議で、8回着替えて写真を撮る。その写真は、数日にわたって合わせて60時間のコンサルティングを行ったことを装う証拠に使われる。写真を添付した申請書類を国に提出して補助金をだまし取るのだ。個人事業主役には5万円。残りを関与した人たちで山分けする。補助金の出所はもちろん、私たちの税金だ。  別のグループからも、電話がかかってきた。 不正受給グループ「洋服を5から7パターンくらいかな。それをZoomで15分〜20分くらい。ちょ、ちょっと待ってくださいね。家事をやりながらしゃべっているので。ちょっと待ってくださいね」  日常と隣り合わせで補助金の不正受給が語られる。 不正受給グループ「思っている以上に人数が集まった関係で、2〜3人くらい募集をかけないといけないんですよ」村瀬「先生役を?」不正受給グループ「そうです、そうです」  グループは、生徒役だけでなく先生役も募集。つまり、コンサルを行う側も受ける側も、全てグループが仕込んだ偽物、ということだ。 村瀬「生徒役をやった人と同じ人が先生役として申請しても大丈夫?」不正受給グループ「全然大丈夫です。私、両方一気にやったので」村瀬「先生役にIT知識は必要ない?」不正受給グループ「一切いらないです」村瀬「コンサルティングはやらないから?」不正受給グループ「そういうことになりますね」  私たちの調査で、この不正受給の参加者を募るグループが複数存在することが確認できた。それぞれのグループ内では活発にやり取りが交わされている。 SNS上の書き込み「朗報です!運営(先生役)を募集します。報酬8万」「お疲れさまです!気になります」「私も興味があります!」 村瀬「こちらはいくつもある勧誘グループの中の一つのSNSなんですが、このグループはあるリストを作っています。中身を見ますと、参加希望者の名前が一覧になっていまして、下の方を見ていきますとずらーっと名前が並んでいます。膨大な量の名前が登録されていまして、現時点では600人近い人の名前が登録されているんです」  一つのグループだけで600人・・・。この補助金には100億円の予算が計上されている。膨大な人が不正に手を染めている可能性がある事態を国はどう考えているのだろうか。 【スタジオ】小川キャスター:取材を行った村瀬キャスターに聞きます。今回の補助金不正受給の最大の問題点はどこにあるのでしょうか? 村瀬:この制度は、ほぼ誰でも参加することができるんです。つまり、偽物の個人事業主であったり、偽物のIT専門家であったりしても、補助金を申請することができてしまうんです。 小川:この制度の基準を厳しくするなどの対応を国は行っているんですか? 村瀬:国に取材したところ、不正の疑いのある事案が複数確認されているということで、これまでは写真撮影だけだったんですけれども、今は動画撮影も条件とするなどルールの厳格化を行ったということです。ですので、このような不正の手口は現時点ではもう行えなくなっています。ただ、過去にこの手口でどれくらいの不正が行われたかというのはわかっていないんです。 小川:コロナ禍に大変な思いをされている方が非常に多くいらっしゃる一方で、こうした大規模な補助金の不正が公然と行われていたということになりますけれども、組織的な構造はどうなっているんでしょうか? 村瀬:先生役や生徒役の上には参加者を指南する「運営役」と呼ばれる人たちが何人かいるんですけれども、さらにその上に「サポート」と呼ばれる組織があることも分かってきているんです。だまし取った金のうち参加者に配られる金はわずかで、そのほとんどが上部組織に上納されるシステムになっているんです。私たちはこの上部組織の調査を現在も続けていまして、「サポート」と呼ばれる組織の輪郭も段々わかってきていますので、その成果については後日改めてお伝えしたいと思います。 小川:この件も含めて、身の回りで起きている不正や問題があれば「TBSインサイダーズ」まで情報をお寄せください。(01日23:36)

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