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記者、タリバン報道官に問う「あなたが言うことと現場で起きていることに乖離がある」【インタビューロング版】

 アフガニスタンを制圧したイスラム主義組織タリバン。その報道官が日本メディアでは初となる対面でのインタビューに応じました。女性の就労制限、芸術や音楽への考え方、アルカイダとの関係、ウイグル族と問題を抱える中国との関係、イスラム法による罰則・・・などなど、タリバンの政治部門の本部がある中東カタールで須賀川拓 中東支局長がじっくり聞きました。
■「タリバン政権」まず取り組むこと 記者:あなたの国は、そしてアフガニスタン人は、いま大変な困難に直面している。 報道官:第一に必要なことは治安維持だ。第二に政治家らと協議を推し進め、前政権で顕著だった政治的空白を埋める。そして新たなイスラム政府を樹立させる。第三は普段の生活を取り戻すことだ。全ての市民、教員や教授など教育関係者にも仕事に戻ってほしい。 ■女性への迫害はやめるのか 記者:女性の仕事について、彼女たちは教員になれるか、研究職に就けるか、裁判官になれるか、テレビ司会者になれるか、政治家になれるか、制限はあるか、イスラム法の制限内ということだがこうした仕事は制限されるか? 報道官:今言った全ての職業についている女性は既に仕事を再開させている。 記者:しかしこの間の会見で、アフガンの女性ジャーナリストは自分の同僚女性たちがタリバン戦闘員に帰宅を命じられたと言っていた。いったい何が起きている?あなた方が言うことと、現場で起きていることに乖離がある。 報道官:カブールであっても地方都市であっても女性ジャーナリストやテレビ司会者は働いている。私が知る限りは働いているが個別の事案については知らない。アフガンの女性は初等教育から大学まで行ける。そこに障壁はない。 記者:大学まで? 報道官:そうだ。 記者:大学以上も? 報道官:そのとおりだ。女性の職業も同じ。色々な仕事に就ける。唯一、ヒジャブを被る必要がある。 記者:(教育は)技術、科学、文学、色々あるが制限はあるのか。 報道官:なんでも勉強できる。 記者:どんな勉強も可能か。 報道官:そのとおり。 記者:本当に何も制限がないのか。 報道官:もちろんアカデミックな内容でも 、ジャーナリズムでもやりたい勉強ができる。 記者:では、芸術や音楽はどうなのか。前の政権では厳しく制限されていた。 報道官:音楽やそういった芸術活動はイスラム法に照らし合わせる。もし国として規制されれば、そもそも勉強する必要がない。 ■アフガン市民の脱出の理由は 記者:多くの国民が脱出しようとしている。アフガン市民の支持をどれほど得られている? 報道官:第一に、空港に集まっている人たちはほとんどが“経済難民”だ。外国人によってうわさが広がっている。「欧米に移住したければ空港に行け」と。だから人々が空港に集まっている。そのせいで人々が折り重なり飛行機につかまるなどして多くの死者が出た。 記者:脱出するために人々は命を懸けた。経済的な理由というのはつじつまが合わない。飛行機の車輪につかまるなどして人が空から落下する事態だ。 報道官:街の人たちが話していることを聞くと「空港に行け」と言っている。欧米に移住できる「ゴールデンオポチュニティ(=千載一遇のチャンス)」だと。正式な書類が無くても大丈夫だと(噂が)広がっている。「ゴールデンオポチュニティ」なんだと。空港にいけば移住できると思っている。 記者:しかし、彼らはバッグ一つしか持っていない。人生を、思い出を全て置いてきている。祖国を捨てることは簡単ではない。彼らの祖国への思いはどうなる?経済的な理由というのはどう考えても合理的ではない。 報道官:あなたに言いたい。テレビを通じてアフガン市民に伝えたい。ここはあなた方の祖国だ。残ってほしい。そして国の再建を手伝ってほしい。私たちは皆で一つだ。一緒に復興を進めるべきだ。あなたたちの生活は保障する。尊厳も守る。あなた方の命を守る。(空港で)泣いている人たちは、祖国を思って涙を流しているのではない。祖国を思うのなら彼らは残るべきだった。彼らは欧米に移住したいがために涙を流している。だから私はあなたの意見には同意できない。 ■「タリバンを恐れることはない」は本当か 記者:タリバンによる制圧で恐怖におののいている人たちがいる。 報道官:恐怖を感じているという話は現実的でない。私たちは全面的な恩赦を発表しているから恐怖はないはずだ。私たちは、何千人ものガニ政権や治安部隊に関連した人物を逮捕したが全員釈放した。多くの私たちの仲間を殺害した多くの殺人犯も釈放した。全てを分かったうえで逃がしている。 記者:一方でドイツの記者の家族が殺害されたという報告がある。複数のケガ人も出ている。タリバン戦闘員による家宅捜索も行われているという。あなた方が会見でも度々言ってきた、恩赦を与えるということと矛盾している。 報道官:あの案件については個別に調査している。現場の部隊にそうした指示はなされていない。家宅捜索の指示もない。恩赦の方針と異なる。そして、あれはあくまでも言い分だ。そうした言い分をしっかり捜査すると実際に起きていないことが分かる。個人的な事件の可能性もある。我々の治安部隊はそうした事件についても、仮に発生していたら犯人を追及する。 記者:指導部と現場との間で意識のずれがあるのでは。戦闘員は統制がとれているのか。 報道官:もちろん(指導部が)グリップできている。ただ、アフガンの人口は4000万人だ。もしかしたら1人我々のポリシーに反する人が出てくるかもしれない。そうなれば拘束し裁判にかけるだけだ。毎日いろいろなことが起きている。そうしたことはあなた方の国でも起きるはずだ。 ■ガニ政権を狙った“暗殺リスト”の存在は? 記者:タリバンは、ガニ政権の治安部隊や情報省の職員らを対象としたブラックリストを作っている。すでに家宅捜索が行われ、職員が逮捕されたという報道もある。これは事実か? 報道官:それは完全な間違いだ。事実ではない。ヒットリスト(暗殺リスト)のようなものはない。家宅捜索もしていない。誰かが主張して騒ぎ立てているだけだ。世界に対してアフガンの大衆の意見を誤解させるようにしているだけだ。そうすることで海外に逃れたいだけだ。 記者:(ブラックリストが)指導部に無くても現場の戦闘員の間にはあるのでは? 報道官:ないない。なぜそんなものが存在する必要がある。市民にはアフガニスタンにいて欲しいのだ。存在もしない暗殺リストで優秀な頭脳が流出するのは避けたい。アフガニスタンの将来のために必要な人材ばかりだ。一緒に復興させたいのにそんなリストを作って、怖がらせることをするはずがない。 ■タリバンとアルカイダの関係 記者:カブール空港、カブール市内の治安維持はハッカーニネットワーク(タリバン内の強硬派グループ)が担っている? 報道官:いやそれだけじゃない。ハッカーニはタリバンの一部だ。ハッカーニはタリバン内ナンバー2の組織だ。ただ他の州や地域からの治安部隊も来ている。 記者:ハッカーニネットワークはアルカイダとの関係が悪名高い。いまハッカーニネットワークがカブールの治安維持をつとめているとなると、タリバンとアルカイダとの関係も少なくとも継続していると言えるのではないか。 報道官:それはちがう。ドーハ合意で署名し、アメリカと約束を交わしている。私たちはどんな海外テロ組織であっても、アフガンの土地を使って、外国に危害を加えることを許可していない。 記者:ではハッカーニネットワークとアルカイダは全く関係がないと? 報道官:もちろん、もちろんだ。合意で署名もしている。国として指導部として決めたことで例外はない。 ■多民族国家の樹立は可能なのか 記者:対タリバン勢力が(アフガニスタン国内の)パンジシール渓谷に集結している。彼らの要求は、すべての民族や部族が組み込まれる包括的政府の樹立だ。それがあれば戦闘行為に及ばないと言っている。実現可能か? 報道官:わたしたちの国には多くの民族がいる。例えばタジク、ウズベク、ハザラ、パシュトゥーンだ。彼らと包括的な政府を作りたいから、未来にむけて協議を続けている。だからこそ政府樹立の発表までに時間がかかっている。 記者:ただ歴史を振り返るとタリバン前政権は、ハザラ人(アフガニスタンの少数民族)を迫害した過去がある。わたしたちは歴史からしか未来を予想することができない。全ての民族を含む包括的政府の樹立は難しいのではないか。 報道官:まずお伝えしたい、あなたが歴史に学ぶというのなら、アメリカ人と北部同盟(反タリバンで結束した部族同盟)のことを思い出してほしい。連中は政府の高官を独占した。私のようにヒゲとターバンをつけている人物は独房に入れられて拷問され殺された。でも私たちは今回、財産や命を保障した。そして包括的な政府のために協議をしている。(アメリカとタリバン)2つを比較して欲しい。どちらが人道的か。これが事実で、これが歴史だ。残念ながら世界のメディアは偏向している。現実から目をそむけ片一方の意見ばかり紹介し、私たちを貶めようとしている。 記者:あなたが言ったように米軍やガニ政権によって、これまで非人道的なことがあったことは分かる。しかしだからといってあなた方が20年前にしたことが正当化されるわけではない。人々が恐怖しているのはそうした現実があるからだ。 報道官:私たちが何をした?彼らは私たちを独房に押し込めた。独房の中で窒息して死んでいったのです。それでもこうした人たちに新政府への参加を呼び掛けている。そして故郷のアフガニスタンに残ってほしいと言っている。 ■中国との関係 記者:アフガニスタンの復興において、中国とはどんなビジョンを描いている? 報道官:中国は素晴らしい隣国でもあり、強大な経済力を持った友好国だ。彼らとは良い関係を築きたい。お互いにとって良いはずだ。だからといって他の国と、関係を持たないわけではない。例えば日本ともポジティブな関係を持ちたい。 記者:しかし中国はウイグル族と問題を抱えている。イスラム共同体でもありあなた方の兄弟だ。将来的なタリバン政権が中国に対して、この問題を公式に追及することはあるのか。 報道官:わたしたちのポリシーは明確だ。アフガニスタンから他の国に危害を及ぼすことは望まない。 記者:そうではない。中国で起きていることはアパルトヘイトだ。少数派イスラム教徒コミュニティーへの隔離政策だ。あなたの政府は中国に対しこの問題について言及することはあるのか。 報道官:中国に住んでいるイスラム教徒は中国の市民で親愛なる人々だ。そして全ての中国人は同じ権利を持つべきだし。問題を混同するべきではないと思う。 記者:ではあなたたちはウイグル族に味方しますか? 報道官:何度も言うように彼らは中国の市民だ。そして中国人として中国の法律の下、平等であるべきだ。 記者:彼らが平等に扱われていないのは明白だ。 報道官:法律の中で考えないといけない。法律の中で公平公正でなくてはいけない。迫害されてはならないし、同じ法律のもとにいなくてはならない。 記者:ではウイグル問題で不公正なことがあれば、中国政府にちゃんと話すと? 報道官:このことについて中国も着目してくれていると期待している。安全保障や人々の平等などについても焦点を当てているはずだ。 ■イスラム法による罰則はどうなる? 記者:イスラム法が施行され裁判所が許可したら、石打刑や公開処刑、手足の切断などといった罰則はあるのか? 報道官:これはイスラム法の司法当局が決めることになる。司法省が確立されれば、法律が出来上がるだろう。 記者:ということは可能性がある? 報道官:言った通り将来の司法当局が決めることになる。(01日22:39)

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