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大原美術館

高階秀爾 館長

2017年10月23日(月)

——夢をお聞かせ下さい。

高階:大原美術館は人々と優れたアートというものが出会う場所です。これからもずっとそういう場所であり続けたいと思います。

——1930年に開館した倉敷市の大原美術館は、日本で最初の西洋美術中心の私立美術館で、若手芸術家の支援にも力を入れていますね。

高階:美術というのは非常に古くから人間の生活にとって大変に大事なものです。それは将来にもつながってきます。将来の美術を生み出す若い人々を支援していこうというのが、この(若い芸術家支援の)趣旨です。大原美術館としては、毎年1人ないし2人を滞在制作ということでお呼びして、今年は水野(里奈)さんに来てもらって、その成果を展覧会で披露するということで、ちょうど今、展覧会を開催しています。

——水野さんの作品をご覧になって、どんなふうに感じられましたか。

高階:非常に豊かな想像力と可能性のある作家だということを感じていたのですが、実際に倉敷に来て、そのエネルギーが幅広く開いていったわけです。作品は大きな画面ですが、その中にはいろんなものが入っています。色彩も豊かですし、筆の勢いにも見事なものがあり、新しい芸術が生まれてきたなと感じました。
大原美術館のこの「ARKO(Artist in Residence Kurashiki, Ohara)」という滞在制作は、児島虎次郎が持っていた昔のいいアトリエがそのままになっているので、そのアトリエを提供して、若い方に制作してもらうというものです。若い人はなかなか場所もないというので、広いアトリエで自由に作っていただくということで、もう12年ぐらい続けています。

——町にとってもいい影響があるでしょうか。

高階:倉敷は非常に古い町です。しかし、同時に若々しい将来に向かってのエネルギーをここからくみ取ってもらえるのだということで、町の人にも大変に興味を持っていただいております。

——これからもそうした取り組みは続けられるお考えでしょうか。

高階:虎次郎のアトリエを使っての「ARKO」は、これからも毎年やります。それから、最近の美術というものは、絵を描くだけではなくていろいろなパフォーマンスや音楽も含めていろいろと多様化しています。芸術はアトリエだけではないので、それは「AM倉敷(Artist Meets Kurashiki)」という、倉敷で芸術と出会うというプログラムで、新しいパフォーマンスや音楽の人を合わせた別の取り組みをしています。毎年さまざまな人に来ていただいております。

——児島虎次郎館が移転されるそうですね。

高階:有隣荘のすぐ裏側に中国銀行の倉敷本町出張所があったのですが、その建物をいただいたのです。この建物はアールデコ風というのでしょうか、20世紀の代表的な建築です。そうなると美術館もあるし、江戸時代の建物もあるし、有隣荘もあるので、それらが一つながりとなって、しかも児島虎次郎の作品も見せられることになります。美術館は近代美術を中心としたヨーロッパや日本の作品があるのですが、もっと古いものもあるのです。例えば、西アジアやエジプト、オリエントのもの、中国のものなど人間の作ってきた美術がいろいろあります。それらは、普段はなかなかお見せする機会がなかったのですが、新しくいただいた旧中国銀行倉敷本町出張所を改装して、建物も見るし、美術館の持っている古いものも見せようと思っています。

——ここを訪れる皆さんに、どんなふうに感じ取ってもらいたいのでしょうか。

高階:それが、まさに人とアートが出会うということなのです。アートに出会うということは、昔の人々、あるいは遠い異国の人々とそこで出会うわけです。昔の人もそうであったんだなと。昔の人の息づかいというものが目の前にある。それが美術館の持っている大きな役割だと思います。私どもは、アートを通して人々のつながり、それも昔の人と、そして若手の芸術家、将来の人はこういうものを見るのだろうなという人々とのつながり、それを紡いでいきたいと考えています。

——これからの大原美術館の役割について、どんなふうに考えていらっしゃいますか。

高階:大原美術館には、非常に古いもの、今から4000年ぐらい前の、文明の発祥の地であるオリエントのものとかエジプトのもの、中国のものもあります。それらはずっと歴史がつながっていて、江戸時代から現代、さらに若い人も加えて未来へと、そういう歴史の「時間の縦軸」と、それから、倉敷の町から岡山、日本、そしてエル・グレコのものがあるのでスペインの方がわざわざ見に来るといったように、世界に広がっていく「空間の横軸」、そういう縦軸と横軸が交わる「文化の十字路」が美術館です。大原美術館は、その文化の十字路として、人々に優れたものをお見せしながら、同時に人々の出会う場所になりたいと思っています。

高階 秀爾(たかしな しゅうじ)

大原美術館館長

1932(昭和7)年東京生まれ。1953年東京大学教養学部教養学科卒業。東京大学大学院在学中1954年9月~1959年フランス政府招聘給費留学生として渡仏、パリ大学付属美術研究所及びルーヴル学院で西洋近代美術史を専攻。東京大学文学部教授。1992年4月国立西洋美術館長。2002年4月に大原美術館館長就任。東京大学名誉教授。パリ第一大学名誉博士。日本芸術院会員。2000年紫綬褒章、2005年文化功労者。2012年文化勲章など多数受章。著書に『世紀末芸術』(ちくま学芸文庫)、『名画を見る眼』正続(岩波新書)、『日本近代美術史論』(ちくま学芸文庫)、『近代絵画史-ゴヤからモンドリアンまで』上下(中公新書)など多数。