6月20日(水)午後7:00~7:55

おらが街のオーケストラ~岡山フィルの新たな挑戦~

1992年に岡山初のプロオーケストラとして産声を上げた岡山フィルハーモニック管弦楽団。演奏者は、学校の先生や音楽教室などを掛け持ちしながら代わる代わる出演する「登録団員」。それに関東・関西の大手オーケストラから助っ人に駆けつけた「エキストラ」で構成されている。岡山フィルの魅力は、登録団員の堅実な演奏とエキストラが持ち込む都会的な香りの融合とされてきたが、一方でこんな指摘もあった。「楽団員の顔が見えない」「独自の音を持たないオーケストラ」。
そこで岡山フィルは結成以来初めてのプロジェクトに踏み切った。
各楽器の首席奏者をオーディションで選んで専属契約を結び、楽団の顔を作るのだ。
専属で楽団員を抱えるには新たな予算を組む必要がある上、楽団の顔として登録団員に溶け込めるのか、一つ間違えばオケの運営に亀裂が入るリスクも伴う。しかし、岡山フィルには賭けに出なければならない背景があった。
クラシック音楽業界は、昭和20~30年代初頭に、戦後復興で国民が西洋文化に傾倒し黄金期を迎えたが、その後、ポップス、フォーク、ジャズ、あらゆるジャンルの西洋音楽が登場したために音楽ファンが分散化。その結果、現在のクラシックコンサートの観客は、昭和20~30年代に青春時代を過ごした高齢者が目立ち、このままでは興行、すなわちオーケストラの運営は先細る一方との危機感がある。加えて、地方オーケストラの経営は企業や自治体の支援に負うところが大きいが、世の中の合理化が進む中、費用対効果が説明にくい文化活動への協賛は、最も予算カットの対象になりやすい。岡山フィルのオーディションには、新たなファン層の開拓と協賛各社に岡山フィルが地元になくてはならない「おらが街のオーケストラ」に生まれ変わることをアピールする狙いがあった。
オーディションには全国から200人以上が応募。去年10月、実技試験と面接を経て7つのパートで候補者が絞りこまれた。最終審査は今年3月と5月の定期演奏会。実際に首席奏者を任せて適性を試し、正式採用するか否かが決まる。7人の演奏家たちのサバイバル。岡山フィルの新たな挑戦が始まった。

写真=最終審査に進んだ7人の音楽家