7月16日(水) よる8:56~9:54

村という生き方~岡山・西粟倉村と旧阿波村の挑戦~

轟音と共に銀色のシャフトがゆっくりと回り始めた。これから50年、地域住民の暮らしを支える「小水力発電(村営)」の始まりである。
「意思決定が速かったため、有利な売電価格で契約できた」と村の職員は胸を張る。
去年春、岡山県で初めて「環境モデル都市」に選ばれた西粟倉村(人口約1460人)。
小水力発電により村民およそ450世帯の電力量、実に7割近くを賄えるという。
美作市との合併協議から離脱して10年。「村として生きる」という選択に共感したのは若者たちだった。「移住者が新しい産業を立ち上げてくれた」と青木秀樹村長はいう。この10年で経済規模はおよそ30%増加、すべて間伐材を使った新産業の成果だ。そんな西粟倉村にこの春、新たな人材が移住してきた。
環境学博士で再生可能エネルギーの専門家・井筒耕平さん(38)。
「行政の志が高く、自分の大切に思う価値が共有できていた」と移住の理由を語る。彼の目標は間伐材をエネルギー源として利用するモデルの構築だ。
一方、対照的なのが2005年に津山市と合併した旧阿波村(人口約570人)。
この春小学校が閉校、JAのガソリンスタンドも撤退した。来年には津山市役所の支所も出張所に変わる。過疎高齢化により地域の存続は岐路に立たされていた。
「合併したからこうなったわけではない、やはり自分らの村は自分らでつくらないと…」と地域住民は奮起する。4月、地域住民によって「あば村宣言」が始まった。
「行政区としての村は戻らないが、もう一度村という地域の生き方は取り戻したい」とあば村運営協議会会長の小椋懋(つとむ)さんは意気込んでいる。
「村という生き方」には地域の理想がある。
西粟倉村と旧阿波村、岡山県北の2つの場所から地域の取り組み、そして村で志す若者たちの生きざまを追った。

写真=五右衛門風呂を楽しむ井筒耕平さんと長男の風太くん(2歳)