「東京からパリに帰って来る」

パリに帰って、美味しいなと思うのはパンである。日本では大変に凝って賑わっているのだけれど、日本にはパンが無い。フワフワと膨らんだだけの、ニチャニチャとしただけの、パンより団子に近いものが日本のパンである。それがいいと思われているらしい。口中で歯に引っ付いて気持ちが悪いというのが、感想である。お煎餅では固すぎて話にならないが、パリッと乾いた、起ったところがないのである。湿度の関係だろうか。ジャムパン、菓子パンの気持ちの悪さはこの上ないと、ヨーロッパの人は思っている。食パンのボリュームの上がったフワフワは、目が細かく揃っていてもパンでは無い。もっとも日本の人はこの日本の食パンがパリに無いと、逆にこちらで態々探すのであるが。日本の高級レストランで、シェフが当店で焼いていますと、自慢げに出されても団子で驚いた。パリに久しぶりに戻った朝、行き付けのパン屋に駆けつけ、焼き立てのパンを持ち帰り、こんなに美味しかったのか、久しぶりの味だと朝食に感激する。お茶漬けの味のようなもので、慣れなのかもしれない、しかし日本でパンと思われている、お団子とは違う。

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