「夏の出来事」

フランス語を習い始めた頃、円筒形の制帽に、マントケープを羽織り、自転車に乗ったお巡りさんの姿が出て、庶民に親切に親しまれている会話を習った。ところが今や劇画に出て来る黒いヘルメットにマスク、肩、ボディ、脚、腰、防御のゴールドラックみたいな、凄い姿で、催涙弾やゴム銃を撃つ姿である。フランス西部のナント市では、この地方には日本企業の工場進出も多いところだが、若者の深夜ロックコンサートを、許可時間が過ぎたので中止させようと、催涙ガスに警棒を振るっての警官隊の猛攻撃、逃れた若者たちが川にはまって一人の死者がでて、警察はやりすぎだと若者の反対デモが、以来連日続いて騒動、全国に大きく報道されている。確かに色々デモや催しがあると、事故が起きないように多大の警官部隊が動員されてものものしい。

しかし一方、昨年まで数字が下がり気味だった空き巣の犯罪件数が、今年になって逆上昇を始めて、目下一日に645件平均、フランスで起きている。黄色いベスト運動以来、警官が手薄になったせいではないかと分析され、郊外に庭付きセカンドハウスを持つのは優雅だが、軒並みにやられる覚悟がいるらしい。第二次大戦後復興期に外国人移民労働者の労働力に頼った、フランスの現状のありさまを、よく見てほしい。

2019年8月12日 赤木 曠児郎

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